第247話 仏性その五十六 わからなければ黙れ

 「前後の粥飯頭しゅくはんとうみるにあやしまず、あらためなほさず。又、画することうべからざらん法はすべて画せざるべし。画すべくは端直たんじきに画すべし。しかあるに、身現の円月相なる、かつて画せるなきなり。」

歴代の住職たちはここに描かれている絵を見て疑問に思うことなく、これを改め、直すことをしていない。絵に描くことができない法なのであればまったく書かないことだ。もし描けるのならそのままに描けばよい。そうであるのに、身現が円月相であるということをかつて描いたものがないのである。

 身現円月相とは坐禅のことである。坐禅そのもののことである。

 よくわかっていないのなら、黙ってじっとしているがよろしい。しかし世の中の人間は、わかっていないことがわからず、あーでもないこーでもないと言い散らかし、訳のわからんことをしでかしている。頭の中の妄想に憑りつかれ、混乱し支離滅裂になっている。世の中で起こっていることって、訳のわからん事ばかりだ。

 いったん、とにかく坐禅して正気に戻りなさい。

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