第194話 仏性その三十七 四祖と五祖の会話

 「祖見問曰そみてとうていわく、「汝何姓(汝何いかなる姓ぞ)」。

師答曰こたえていわく、「姓即有、不是常姓。(しょうはすなわち有り、是れ常の姓にあらず。)

祖曰いわく、「是何姓(是れいかなる姓ぞ)」。

(是れ何なる姓ぞ。)

師答曰、「是仏性(是れ仏性)」。

祖曰、「汝無仏性(汝に仏性無し)」。

師答曰、「仏性空故、所以言無(仏性空なる故に、所以ゆえと言ふ。)

祖識其法器、俾為侍者、後付正法眼蔵。居黄梅東山、大振玄風(祖、其の法器なるをつて、侍者たらしめて、後に正法眼蔵を付す。黄梅東山に居して、大きに玄風を振ふ。)

 四祖が五祖を見て言った。

 「お前の姓はなんという」

 五祖は答えて言った。

 「姓はあります。普通の姓ではありません」

 四祖「なんという姓か」

 五祖「仏性です」

 四祖「お前に仏性は無い」

 五祖「仏性は空だからそれで無とおっしゃるんですね」

 四祖は五祖が法を継ぐ器量があると知って侍者とし後に法を継がせた。法を継いだ五祖は黄梅県の東山に住みおおいに奥深い仏法の風をふるった。

 通常は上に書いたように読むだろう。しかし道元禅師の解説は全く違う様相を呈する。空とか無とか観念的なやり取りではないのだ。次回はその解説となる。

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