第171話 仏性その十四 脳味噌を振り捨てよう

 「仏性のごんをききて、学者おほく先尼外道せんにげどうのごとく邪計じゃけせり。それ、人にあはず、自己にあはず、師をみざるゆゑなり。いたづらに風火の動著どうじゃする心意識しんいしきを仏性の覚知覚了かくちかくりょうとおもへり。」

 仏性という言葉を聞いて仏教を学ぼうという者の多くが仏教ではない思想の持ち主のいう霊魂(我)のように間違って受けとめてしまう。それは人間とはなにかを見ることなく、自己を真に受けとめることなく、正しい真の師に出会っていないからである。いたずらに物質の変化・動きを見たり感じたりする精神のはたらきを仏性によって感じてはっきりわかるのだと思ってしまうのである。

 一切衆生=悉有=仏性なのだから、大宇宙の全存在と自分を別のものと考えてはいけない。自分、自己というものあるいは霊魂あるいは精神が自分の外側の存在を感知することによって「存在している」ことがわかるということではない。

 「自分はこう思う」「自分の考えが正しい」に囚われて、事実が見えなくなってしまっている人間のなんと多いことか。

 小さな脳味噌に囚われてはいけない。我々は本来大宇宙そのものなのだ。広大な無限なありのままの存在なのだ。この本来の面目に立ち戻らない限り真実・真理に従って行動することはできない。真実・真理を実現・実証することはできない。

 坐禅して凝り固まったちっぽけな脳味噌を振り捨てよう。

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