第169話 仏性その十二 情報、知識は迷いの元凶となる

 「本有ほんぬにあらず、亙古亙今かんこかんこんのゆゑに。始起の有にあらず、不受一塵ふじゅいちじんのゆゑに。条々の有にあらず、合取がっしゅのゆゑに。無始有むしうの有にあらず、是什麼物恁麼来ぜしもぶついんもらいのゆゑに。始起有しきうの有にあらず、吾常心是道ごじょうしんぜどうのゆゑに。」

 もとから固定した形で存在するのではない。過去から現在まで瞬間瞬間の連続の中で存在しているのだから。今存在が始まるというものではない。この大宇宙には一つも不要なものなどない全てが存在しているのだから。色々なものが各々存在しているのではない。全ての存在をひっくるめて大宇宙なのだから。始まるということがないというものではない。なにものかがこのようにやってきているのだから。今ここに始まったというものではない。我々の心は常に仏道にあるのだから。

 道元禅師は有について、存在というものについて綿密に解説されている。色々な仏教用語を引用されて解説されている。

 言葉を知っていることは悪いことではない。しかし言葉に囚われてはいけない。

 大宇宙はありのままに存在している。我々もありのままに存在している。我々は本来真実・真理そのものなのだ。

 しかしそれを見失ってしまう。だから坐禅して本来の面目に立ち返らなければいけないのだ。

 今の世の中、情報が溢れている。言葉が氾濫している。知識をたくさん持つことは可能だ。しかし情報、知識に囚われ本来の面目を見失い、真実・真理から遠ざかって迷いに迷ってしまっている。そんな人間がたくさんいる。そう感じる。

 情報、知識を使いこなせる身心じゃなきゃ話にならない。そうでなければ情報、知識は迷いの元、元凶にしかならない。

 だから坐禅が必要なのだ。

 

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