第137話 摩訶般若波羅蜜その八 感情に振り回されない

 安忍あんにん忍辱にんにく)は我慢するということになるんだろう。

 けど、この我慢ていうのは「禁欲」ということじゃないと思っている。前にも書いたけれど欲望がなきゃ人間は生きていけない。感情の無い人間は不自然だ。

 だから欲望の衝動、感情の爆発に囚われないということではないか。

 これらに囚われて行動してしまえばろくなことはない。これは誰しも経験しているのではないだろうか。

 だから仏教でははっきりと安忍あんにん忍辱にんにく)という戒律として示している。

 何かが起こった時、事実をはっきりと把握し正しく行動できないと色々と困ることになる。

 怒らないということではない。怒るべき時はきちんと怒らなければいけない。

 泣かないということではない。泣きたければ泣けばいい。

 喜怒哀楽がなくていつも冷静なんていうのは人間として不自然だ。

 仏教は超人になることを目指すものではない。普通の人間になることが目的だ。そして「普通」になることが如何に難しいかは世の中を見ればよくわかる。

 感情や欲望が生まれた時ちょっと「ん、これは」と立ち止まれればいいなじゃないかと思う。

 今の世の中、欲望や感情が露わになりすぎていると思う。それを良しとしている、称賛したりもしている。けどねえ、如何なもんでしょうか。欲望や感情は得てしてエスカレートしがちだ。欲望、感情が生きることの中心になってしまっては駄目だろう。

 感情は豊かにあるけれど、感情に振り回されることはない。

 そこが仏教が教えるところだと思っている。

 坐禅した身心はそれが自然とできるようになる。何かが起きた時、瞬間的に真実・真理に従った行動が取れるようになるのだ。

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