第46話 辦道話その三十五 脳味噌の活動を止めろ

 「しめしていはく、なんぢいま諸仏の三昧さんまい、無上の大法だいほうを、むなしく坐してなすところなしとおもはむ、これを大乗をほうずる人とす。まどひのいとふかき、大海だいかいのなかにゐながら水なしといはむがごとし。すでにかたじけなく、諸仏自受用三昧しょぶつじじゅようざんまいに安坐せり。これ広大の功徳をなすにあらずや。あはれむべし、まなこいまだひらけず、こころなほゑひにあることを。」

 第三問答の答え。

 示して言うことには、お前さんは、仏と言われた方々が大宇宙の真実・真理と一体となって生きている状態、これ以上ない最高の偉大な教えである坐禅を、ぼんやりと虚しく坐っているだけで何もしていないと思っている。これは身心を大宇宙の真実・真理とするという教え(大乗)を誹謗する、けなす人間であるということだ。迷いがとても深いために大海の中にいながら水が無いと言っているようなものである。坐禅した瞬間にありがたいことに仏と言われた方々と同じ自らを受け取り自らを使いこなすことができる身心(自受用三昧)となって安らかに坐っているのだ。これは広大無辺の効果、効用を発揮していることにほかならない。憐れなことに、まだ真実・真理とは何かがわかる目が開いておらず、心はやはりずっと酔っ払っている状態にある。

 坐禅はこの身心を大宇宙の真実・真理と一体とさせるものだ。人間として最高の状態、本来の状態にする唯一の方法だ。だから「何もせず虚しく時を過ごすものである」などというのは、あまりにも見当違い、間違いにもほどがあるというものだ。

 今の世の中を見てみれば、忙しく必死になって脳味噌を絞り、「自分は正しい」という妄想に憑りつかれて、愚かとしか言いようのないことをやっている人間ばかりではないか。

 妄想を生み出すだけの愚かな脳味噌の活動をやめろ。いつまでこんなことをしているつもりなのか。

 坐禅して身心脱落し、本来の面目を取り戻せ。

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