第33話 辦道話その二十二 不可思議 プーチンと遊覧船の船長と

 前回「不可思議」という言葉が出てきた。ちょっと不可思議について書いてみたい。

 不可思議という言葉は今「奇妙な」「異様な」「人力では及ばない」というような何か神秘的なニュアンスをもって使われることが多いように思う。

 けど思議することが不可、思議することができないと素直に受けとめればよいと考えている。

 真実・真理は絶対に存在する。大宇宙の真実・真理は絶対的なものだ。その存在を疑う余地はない。

 しかし、それは「こういうものです」と示すことはできない。考えて把握、理解できるものではない。つまり不可思議だ。

 坐禅した身心、つまり本来の真実・真理の状態、大宇宙の真実・真理の状態となった身心ならばその存在を信じることができ、その状態の行動は真実・真理に従ったものとなる。これは絶対的な事実だが、この状態はいくら頭で考えても到達することはできない。

 けれどそう言ってしまっては、真実・真理を人類に伝え残すことができない。それで道元禅師は正法眼蔵をはじめとした書物をお書きになって、何とかしてこの「思議することができないもの」を伝えようと苦心惨憺されて書き残された。

 正法眼蔵を読むことによって思議することができない真実・真理、大宇宙の真実・真理についてアプローチすることができる。しかし、その真髄、本当の核心は坐禅する以外に到達することはできない。

 人間の思考する能力は素晴らしい。これは否定などできる訳がない。

 しかし、ロシアは武力で殺戮と破壊を続けている。遊覧船の社長は当然の帰結としての遭難事故を起こすようなことをしている。

 プーチンも社長も頭の中の考えでは「自分は正しい」のだ。

 そして人類の思想や人類が作ってきた仕組み(例えば国連)は「正しい」と考えている人間の行動を止めることができていない。

 人間が頭で考えることは極めて限定的な範囲でしかなく、その範囲において合理的で論理的なものにすることは簡単だ。しかし、それは極端に言えば妄想だ。一つの思考に囚われるとどんどん歪んで行き、過激に残酷になる。

 ウクライナも遭難事故もその当然の帰結だ。

 頭で考えることだけに偏ること、偏重がいかに危険であるか、事実が証明している。

 とにかくまず身心を正しい状態、真実・真理の状態、大宇宙の真実・真理の状態に戻すこと(人間は本来真実・真理の存在なのだ)。このことだけが、人類の未来を守る。だから坐禅するしかないのだ。

 坐禅しましょう。

 

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