第17話 辦道話その六 邪師に惑わされ迷いに沈む世界

 単一の思想、独裁的な権力者の国は異常な行動に出る。このことは世界の歴史が証明している。

 現在のロシアがそうであるし、中国、北朝鮮も同じに見える。

 中国がパラリンピックの会長だかのスピーチの一部を中国語に訳さなかったという。そんなことまでしないと国が維持できないような国がまともな国と言えるんだろうか?

 思想に憑りつかれ、自らの行動は正しいと「自狂に酔い」、真実・真理なの存在などは目に入らず(「正解しょうげを覆い」)、長い迷いの国に沈み込んでいく(「ひさしく迷郷に沈む」)。この場合の「思想」は「邪師」と言ってもいい。また、自狂に酔っている権力者を邪師といってもよい。

 人間は本来真実・真理そのものなのだ。ただし、それは坐禅しない限り現れることはない。

 「般若はんにゃ正種しょうしゅを長じ、得道とくどうの時をえん」

 般若とは智慧。真実・真理、大宇宙の真理を瞬間的に直観的に使いこなすことができることを智慧という。

 今の人類は智慧の種を内包しながらそれを芽吹かせ育てる方法を持っていない。ここれでは真実・真理に到達することはできない。

 正法眼蔵を読み、坐禅することが全人類に拡まらない限り、真実・真理に到達することは不可能だ。

 それまでの間、破滅しないための行動をとれるかに人類の未来はかかっている。

 私にとっては仏教は思想ではない。仏教だけが人類が生きていく方法を示している。人類が生き残るための身心を手に入れる方法を具体的に示しているものなのだ。

一つの思想だけで世界が治まるなんてことは絶対にない。人間はそんなに単純ではない。しかし、真実・真理を得るための身心の状態を手に入れることはできる。それが坐禅だ。

 「おのずから名利にかかはらず、道念をさきとせん真実の参学あらむか。いたづらに邪師にまどはされて、みだりに正解をおほひ、むなしく自狂にゑうて、ひさしく迷郷にしづまん、なにによりてか般若の正種を長じ、得道の時をえん。」

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