第5話 俺と宗教 たんすを拝む その2

 「先生」の話のあと、友人はお経らしきもの(お経なのだろう)を唱えながら、食器棚、箪笥、テレビに頭を下げていた。変なことをするなぁと思いながらも、同じように頭を下げた。もしかすると御神体なのかもしれないとも思った。宗教って信じられないようなことするもんね。

 帰り道、友人に尋ねた。「何で家具を拝むんだ?」友人は憤然として「家具を拝む訳ないだろう!上に先生のご先祖の写真があったろう!」と言った。

 私の態度と発言から、「こいつはどうしようもない」と思ったのだろう二度と声をかけられることはなかった。良かった良かった。

 当時、私は悩みもなかったし(ぼーっと生きてたんだろうね)、はっきり言って宗教など全く必要はなかった。

 ただ、この経験から私は「宗教って怖い」と思った。信じると貧相な肝臓が悪そうな爺さんの訳の分からん話もありがたくなるし、家具も拝めるのだ。「これは怖いな」と思った。

 信じなきゃ宗教にならない。とすれば何を信じるかによって大きなリスクを背負うことになる。しばらく経ってオウム真理教事件が起こる。信じれば、殺人も正しいことになる。

 宗教は恐ろしい、近づかないに限る、と思った。

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