第4話 俺と宗教 たんすを拝む その1

 前回は、小学校低学年の頃の話だったが、今回は大学生の頃の思い出。

 ある友人(親しみも感じていなかったし向こうが勝手に近寄ってきたので、その時点で胡散臭いといえば胡散臭い)が「いい先生がいる。話を聞いておいて損はない。絶対役に立つ。一緒に行こう」と熱心に誘うので、まあ一回くらいいいか(怪しい宗教団体の勧誘の話は知っていたけど)と、ついて行った。

 連れて行かれたのは、埃っぽい街中にあるかなり古い木造平屋建ての小さな一戸建ての家だった。

 家の中は線香臭くて陰気な感じで、宗教の施設という雰囲気は全く感じられなかった。

 紹介されたのは小さな痩せた爺さんで、友人は「先生」と呼んでいたが、俺は貧相な爺さんだなと思っただけ。顔色が変に黄色っぽくて肝臓が悪いんじゃないかと思った。そして薄い唇が変に赤かった。

 「先生」は小さな妙に高い声で何かしゃべっていたけど、全く覚えていない。心底興味がなかったのだ。

 しかし友人は正座して頭を垂れて話しに聞き入っている。時々深く頷いたりしている。

 表の通りを「たけやー竿竹ー」と竿竹屋が通って行ったのを妙にはっきり覚えている。

 こんな爺さんにも信者がいるんだとそこは感心していた。



 

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