第2話 私と宗教 うんこと叫ぶ坊さん

 私は寺との交流は一切ない。だから両親が死んだのを機に墓仕舞いし、檀家からも離れた(離檀届を出した)。  

 両親も寺との関係は強くなく、お盆にお経をあげてもらうくらい。両親とも葬式は家族だけの「直葬」を希望していたし、墓もいらないと言っていた。だから散骨して墓仕舞いした。

 寺の坊さんで記憶に残っているのは祖母の葬式の時だ。俺が小学校2年生の時で、あの頃は自宅で葬式をやるのが多かった(少なくとも私の家の近所はそうだった)。

 当然坊さんが家に来る。坊さんは運転手付きの車で来た。帰る段になったら車が無い。

 坊さんは、痩せた神経質そうな人だったが、怒りを全身に漲らせて、俺の家の電話で寺に電話した(50年以上前だから携帯電話なんてない。黒い固定電話)。

 運転手は寺にいて電話口に出たようだった。

 「なんでここにいないんだ!」坊さんは叫んだ。

 「なにい!うんこしたかったあ!ここの便所借りればいいだろう!なんで帰るんだ!さっさと迎えに来い!」額に血管を浮かび上がらせて叫んでいた。

 私はまじまじと坊さんを見ていた。人前であんなに大きな声で「うんこ」と叫ぶ大人を初めて見た。

 仏教=うんこのイメージは正法眼蔵と出会うまで変わることはなかった。

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