2.カラオケ店にて
男に言われて彼女はいらだっていた。
黒いバッグをブンブン振り回して、ガンガン早く歩き、ついた先はカラオケ店。
料金表なんて気にすることなく、すぐに入れる部屋をと要求した。
この時間帯は満席で一番高い料金プランになってしまっても彼女は気にしない。
ストレスが溜まると、彼女は一人でここの店に来る。
彼女の選曲はアップテンポな曲ばかり。
彼女にとって大切なのは指であって、
声でないから好き勝手にしていても怒られることはない。
得点がでる設定になっていて、
採点結果は九十五点以上をマークしていた。
けれどすぐに次の曲を指定してしまう
彼女は得点に頓着するような性格はしていないようだ。
一時間が過ぎて、疲れが溜まってきたのか、
八十点前半まで下がってしまった。それでも彼女はやめようとしない。
邦楽、洋楽問わずにひたすらアップテンポの曲ばかり。
しばしマイクを離すことはなかった。
二時間歌い続けて、気がすんだのか座りこんだ。
「むかつくわ。私が出来なくなって、苦労しているのを知っているはずなのに……」
私は学校が終わるとすぐにレッスンが入っていた。だから高校生の部活動内容なんてクラスメイトから聞く位なものだった。
彼は高校が同じ。文芸部に入っていたらしいけれど、
グダグダ活動しているらしいウチの部活動では
大したこともできない。はずだった。
卒業式のとき、彼女に話しかけてきた。
それだけの希薄な関係。本音を言えば告白かと思ってドキッとしたの。
まぁ彼程度の容姿の人に言い寄られても困ったのだろうけれど、
女の子って告白される側にあこがれるものでしょう。
わたしのことを気にしてくれる異性は
珍しくてほんの少しだけ親近感がわいた。
「なんて私が勝手に思っているだけよね。
彼が知っていることなんて本当に少ないものだもの。
理解できるわけないわ」
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