4.公園にて質問
あれから3日後、何時も彼に会うのは地元の公園。
なんとなく彼に聞くのは自分が負けたみたいで悔しいものだと彼女はおもう。でも聞かずにはいられない。つまり彼女は好奇心が強いのだ。
「ねぇ。どこに行っているの?」
彼女の質問は、唐突で把握に困る。
「俺の通っている学校ってこと? 音楽大学に通っている輝かしい人に言えるほど有名じゃない」
「そう? 知りたいのに」
残念そうにうなだれる彼女に男は負ける。
「そうかよ。……そんなに知りたいか」
彼女がじっと彼のことを見上げていたから。
「じゃあ、当ててみろ。ヒントは県内の大学」
「当り前でしょ。こんな辺鄙な公園でのんびりしているのだから。東京に大学がどれだけあると思っているの?」
「ん~いっぱい。この答えに満足できないようだったら調べてみろよ」
最近わかってきたことだが、彼は自分に優位なことがあると命令口調になる。普段は低姿勢なしゃべり方をする癖に。
「わかったわ」
「期限は一週間だ。できるわけないだろ?」
「やって見ないと分からないじゃない」
彼女はかばんからスケジュール帳を取り出して何やら数を数えているようだ。きっと自由に行動できる日にちを調べているのだろう。
「一週間以内に分からなかったら、作曲したものを弾けよ」
彼女の作る曲は作詞も作曲も優れていると世界の有名なピアニストに賞賛されたこともあるくらいの腕らしい。
もっとも彼女の指導を行っている人が「彼女は奏でるべき才能を持っている。そのことに時間を割くべきではないだろう」とコメントしたのは有名な話となっている。
だから現在の彼女は弾くことだけに力を入れている状況だ。
「作詞作曲って時間がかかるのよ。何十時間もかけたわりに、評価っていまいちなのよね」
「だから負けたときの罰ゲームがわりにするんだろうが」
「わかった。もっとも賭けをさせるほどうまくないから、そのおつもりで」
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