ないものねだり

 気づいていたのかもしれない、平行線で延長線の私たちは、これから先も交わることはない事を。


君からの誘いの連絡は決まって唐突だった。



「暇?」



携帯が鳴った。


直ぐには返信せずに、時計を何度も確認して送信ボタンを押した。


嘘みたいに時間は進むことはなかった。



「まだ仕事中だけど、どうしたの?」


「そっか、ならまた誘う」



私の時間を返せって思った。


本当は仕事なんか終わっていたし、お風呂にも入らず、化粧もそのままで君からの連絡を待っていたから。



「もう仕事終わりそうだよ」


「家くる?」


「遅くなってもいいなら・・・。」


「いつものところね」



部屋着に着替えていたけれど、休日でもないのに

お気に入りの服を着て、使いもしない荷物を持って君の待つ駅に向った。


このままだと早く着きすぎる、待たせてやろうと拗ねていた私。


普段通らない道を通り、赤信号にも優しくなれた。


あー、私はいつからこんなに安っぽい女になったのかな、こんなんだから今の関係性なのかなと、疲れきった電車に揺られながら考えていた。


私は出会った時に、自分より上か下か決めていると最近になって気づいた。


学生時代、付き合ったことはなかったけれど、学園祭を仕切るような陽キャ、サークルの先輩がやけに眩しく見えた。


そんな人たちから言い寄られる場面は何度かあって、結局控えとして都合よく使われた。


追いかける恋愛は大抵、惹かれた人に傷つけられてばかりだった。


また同じことを繰り返しているとわかってはいたけど、電車を降りることはできなかった。

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