第1話
いつものように学校の部活帰り、幼なじみの琢也と一緒に悠と姉さんの為に新作のコンビニのスイーツを買った。琢也もお惣菜を買っていた。多分琢也なりのお母さんを思ってじゃないかと思う。琢也は体育系のサッカー。琢也はキャプテンらしい。私は全く運動が出来ないため、適当に時間潰しのために入った美術部。
簡単な話。琢也と話していると楽しいから。
「奈々、先帰ってていいのに。」
「だって琢也と一緒に話していると楽しいからね。」
「えっ、それって――」
「キャーー!!」
突然、悲鳴が聞こえた。絶対こんなところで聞く声では無い。
目の前には通り魔と人が沢山いた。
ぱっと琢也の方を向いた。琢也は私の方を見ていた。
ちょっと怖かった。でも行くしか無かった。
結局ナイフとかを見るとみんな動けなくなる。わたしもそうだ。みんなの命か私1人の命…。
「琢也、私行くね。」「奈々ー!?」
琢也にそう言って走る。
ぱっと後ろをみると琢也が走って私を追ってきた。
「危ないよ!!退いて!!」
そう言いながら民衆を突き飛ばした。
どすっと言う音が聞こえ、お腹に焼けるような痛みがあった。
そしてナイフを引いた音が聞こえた。…他にも刺すつもりらしい。
この間に琢也が逃がしてくれていると良いなと思ったが、人が叫びながら倒れており、通り魔が逃げていくが見えた。
1人、琢也がこっちに駆け寄ってきた。そして、声にならない悲鳴が聞こえた。
琢也にちょっと怪我が見えた。大丈夫かな。
「奈々っ!?」
それにしても、身体があつい。あつすぎなくらいだ。
「奈々っ、奈々っ!!血が出てる!!血が止まらないよぉ…」
泣きそうになりながら叫ぶ琢也。琢也も血が出てるのに私の心配するものなのかな…。
血だって当たり前に出る。人は怪我とかしたら血は出る。
「奈々ぁ!死ぬなぁ!」
拓也の声で気づいた。多分致命傷なのかもしれないな。私だって死にたくないよ…
母さん、ごめん。私、母さんより早く早死にしそうだ。
姉さん、大好きだよ。姉さんは私のために母さんの代わりしてくれてありがとう。
悠も大好き。可愛くてお姉ちゃんって言ってくれていつも嬉しかった。
そう心の中で思った。
「琢也…うるさいよ…。琢也こそ自分を心配しなくちゃ…私より琢也を…」
「奈々…お腹から血が出てるのに…?」
泣きじゃくって足を怪我しながらも私の心配をしてくれる。はぁ、イケメンが台無しだな。
他の人がどうなっているか確かめるべく見てみるが目が霞んで見えなかった。
…そういえば重要な事を思い出した。
「琢也ァ!!私のタブレット諸々データ全部消して悠に渡してあげてな。」
きょとんとしてたが、言われた事を理解した琢也はくしゃくしゃな笑顔で、
「…いつでも家族思いだな。奈々らしいわ。」
そう言った。
誰もが男子は強いとか思ってそうだが、弱い時もあると思う。だから見たくない。泣くよりか笑顔の方が私にも嬉しい。
「俺ね、今日奈々に告白しようと思ってたんだ…」
えっ、嘘…。早く言って欲しかった。でも、私が言うことはひとつだな。
「…そうかいな。…私も琢也が大好きだよ。
琢也は琢也のお母さんを幸せにして、未来の彼女も幸せにしてね。」
最後に力を振り絞って言った。
呆気なく、一ノ瀬奈々は死んだ。
一ノ瀬奈々の母と父は早死にしており、姉と姪、奈々で生活をしていた。
小学校時代、母と父が交通事故で死んだ。
幼なじみの琢也と一緒に遊ぶことが多かった。そのせいか、琢也の母は他人である私たちに色々振舞ってくれた。
姉は高校に入ると共にバイトを始め、徐々に琢也の母にお金をこつこつ返していった。そして、大手に就職し高校のお金なども返した。姉は結婚し姪の悠が出来た。そして9年経ち、奈々は18歳、姉は29歳、姪は9歳だった。
転生はセーフティとリスクが多い件 神田藍月 @aiduki
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