まさか自分がナンパされるとは思っていなかったツギハギ人間(女性用台本)

ん?

なぁに?

あぁ、この衣装?

素敵でしょ。実は手作りなの。

だって今日はハロウィンパーティーよ?

コスプレイヤーの端くれとして、本気出したいって思うに決まってるでしょ。

私普段から変装とか好きなのよね。憧れの存在になりたいって言うのかな?色んなものに憧れてばかりなの。


うふふ、あなたの衣装もなかなか素敵よ。

乾杯しとく?

はい、かんぱーい♡


あなた普段もこういうナイトクラブとか来るの?

へぇ、常連さんなんだ。

凄いわねぇ。


ん?

私?

私は初めて。

普段はもっと暗いところでちびちびやってるのよ。

こういう派手で騒がしいところは……ちょっと苦手で。

それに私は自分に自信が持てなくて、いつも日陰者。

まぁ、今日くらいはブスな私でもこういうお店来ていいかなって。どんなにブスでも、仮装でーすって言っちゃえば許されるところあるじゃない?


でもまぁ、今日はハロウィンだし、みんな色んな格好しているし、私もちょっとはハメを外してみよっかなぁ……的な。


ぶっちゃけて言うと、一度来てみたかったのよ。

こういうお店。

音楽に合わせて体揺らして、こうして度数の強いカクテルを喉に流し込む……。


そういう場所に行ってみたかっただけ。


お兄さんは普段どうしてこんな所に来てるの?


え?

あはは、ちょっと冗談やめてよ。

私みたいな美人さんと出会うためって。もしかしてそれナンパのつもり?

私全然美人じゃないわよ。

私みたいな女、やめておきなさい。


お兄さん、あなたは本当にいい男ね。

きっと素敵な人と出会えるわ。

私じゃない人、ちゃんと見つけて。


ん?

もう、美人じゃないって。

だって私、今日スッピンなのよ?

え?

あぁ、この顔の傷?

特殊メイクなんかじゃないの。

これ、本物。


私、実は全身ツギハギで出来てるの。

この右手は、昔クラスで一番勉強ができた子の腕。

この足はマラソンの地区大会で優勝した子の足。

この目はメガネの広告に起用されてたモデルさんから。

この肩は知り合いのグラビアアイドルから。


色んな人から譲り受けてきたのよ。


なぜって、うふふ、私だってもっと美人になりたかったから。

でもダメね。私ったらネガティブ発言ばっかりでちっとも魅力的じゃないの。


ねぇお兄さん、あなたの素敵な言葉大好きよ。

ポジティブな言葉で私を喜ばせてくれたそのお口大好き。

だから、私にその舌をちょうだい?


お兄さん、逃がさないわよ。

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