ただあなたに会いたかっただけのフランケンシュタイン(男女兼用台本)

あぁ……。

お久しぶりですね。

えっと、覚えてないかな。

覚えてないよねぇ。

だって最後にバイバイしたのは……もう6年も前だもん。


昔同じ部活でさ。

名前?

名前は……《▓▓▓▓▓》だよ。

覚えてない……よね?


え、覚えてる?

本当に?

嘘……。

えへへ、嬉しい。


うん。6年ぶりだね。

君はとっても成長したんだねぇ。

なんて言うか、凄く大人びてる。

魅力的になったね。

ねぇ、今恋人とか居るの?


そっか、居ないんだ。


ふーん、そっか。


え?

6年前からずっと好きでいてくれたの?

お別れしてからずっと?

もう二度と会えないかもしれなかったのに?


ほんと?

うへへ、嬉しいなぁ。

僕もね、ずっと好きだったんだよ。

ずーっと好きだったの。

でも結局言えないままだったなぁ。


え、付き合っちゃう?

ぼ、僕と君とで、恋人に……?


えへへ、嬉しい……。

嬉しいんだけど、それは出来ないんだ。

ごめんね。


あのね、僕、実は君に会っちゃダメだったんだ。

でもどうしても君に会いたくて……。


あのね、6年前のあの日、急に転校したわけじゃないんだ。

交通事故にあったの。

バラバラに飛び散っちゃって、僕は一回死んじゃったんだ。

冗談じゃないよ。本当の話。

君にしか言えない、本当の話。


ただ偶然、僕を轢き殺したのが凄腕のお医者さんでね。

僕の体をもう一度繋ぎ合わせてくれたんだ。

そして、フランケンシュタインを作る実験を始めたの。

僕はその被検体。


実は今日だけ、お外を自由に歩いてもいいって言われたんだよ。だから会いに来ちゃった♡


って、信じてないね?

んじゃ、ちょっと触ってみる?

ほら、触って?

こことか……こことか……んっ。

えへへ、バラバラでしょ。


僕、もう人じゃなくなっちゃったんだ。


でも今日だけは、お外歩いてもいい日なんだ。

今日だけは。


あ、お迎えが来ちゃった。

僕はそろそろ行くね。

君に会えてよかったよ。

僕も、君のこと好きだよ。

急にサヨナラすることになった6年前よりも、ずっと前から好きだった。


んじゃ、またね。来年の今日、また会いに来るから。

約束だよ。


ハッピーハロウィン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る