第3話 脱走

あれから数日が経過した。

今だに和輝とガルダは囚人のように働かされていた。

しかしわかったことがいくつかある。

一つはここはこの前の金ピカ男の城の地下であること、そして和輝とガルダがいるのはその地下の最下層である。

そして2つ目はブラックであること。

「やってられるかー!何だこのブラック会社はふざけやがって!飯は一日一食、風呂は無し、睡眠時間はたったの3時間短い時は一時間もない……最悪だ」

と和輝は牢屋で一人で愚痴を言っていた。

「そういうもんだ。俺達奴隷の扱いは人間以下だからな俺はもう慣れた」 

「いやいや俺はここに来てまだ数日だぞ?なのに扱いかよ。やっと寝れると思ったら残業させられ睡眠時間は減るわ、飯は何か変な臭いするしよ」

と和輝とガルダが話していると一人の看守が和輝達の牢屋の前まで来た。

「おいお前達仕事の時間だ出ろ。今日お前達には採掘をしてもらう」

看守がそう言うと和輝とガルダは牢屋から出て採掘場に向かった。


「こんなに石ころ掘らせて何がしたいんだか」

と和輝はまた愚痴を言いながらツルハシで魔石を掘っていた。

魔石

地下や大気中の魔素が何十年という長い年月を経て結晶化したもの。

武器や錬金術、魔術にも使える便利物。


「新しい兵器を作るためだとか錬金術に使うためだとかいろいろな噂があるが俺もよく分からん」

「ふぅ~んところでガルダ俺が前に言ったこと覚えているか?」

「ん、ああ脱走する話か」 

と思い出したかのように言うガルダ

「忘れてたなこれは、まぁそうだ脱走のことだ。ガルダ俺は明日実行する勿論お前も強制参加だ」

和輝は当然のようにガルダに言う。

「はぁ?!何で俺まで?!」

「お前に見せるためだよ」 

「見せるって何をだよ?」

「不可能なことはないということを」

ガルダは無言で和輝を見る。 

「何だ俺のことじっと見て、もしかして俺に惚れたか?あいにく俺にはそういう趣味はねぇ」  

「何馬鹿な言ってやがる」

ガルダはそう言いながら和輝の頭を叩く。

「いってぇ加減しろよ!」

「自業自得だ」

「よくそんな言葉知ってたな。関心関心…痛っ」

ともう一度叩かれる和輝

「そうだガルダ何故俺が不可能嫌っているかを聞かせてやろう」

「聞かせてやろうって何様だよ」

「まぁあれは俺がまだ別の世界にいた時の話だ」

「無視か」

と呆れながら和輝の話を聞くガルダ


「俺の元居た世界にはな魔法も魔獣もいない世界だった。あまり言いたくないが元居た世界地球には不可能なことが多かった。例えば生身で空を飛んだり、瞬間移動だったりと、とにかく不可能なことが多かった。その時俺は思ったんだ。もし地球に魔法があったらってな、魔法があれば空も飛べるし瞬間移動したりすることも可能になると思ったんだ。でもそれはただの夢物語、叶うことのない夢。でもある日その夢は叶ったんだ。魔法が使える世界俺達地球人から言う異世界にだ。まぁ異世界に来ていきなり敵対されたけど、ここでなら不可能なことも可能にできると俺は確信したんだ。つまり俺の前で不可能って言う奴は俺の夢を否定してるということになる。だから俺は不可能っていう奴を全力で否定してやろうと思ったんだ。まぁ長くなったけどこれで俺の話は終わり」

和輝はガルダを見ると何か考え事をしていた。

「どうしたガルダあんまり頭を使うと熱が出るぞ」

と言うと和輝はまたガルダに叩かれた。

「いてぇ」

「和輝悪かったな不可能って言って。」

「急にどうした?」

「いやお前の話を聞いて何か決心できた。明日の脱走…俺もついて行く」

それを聞いた和輝は真剣な顔になった。

「俺はお前に強制参加と言ったが別に断っても良かったぞ」

「あぁ」

「失敗すれば最悪…いや確実に死ぬぞ?それでもいいんだな?」 

「あぁ覚悟はできた」

「決行は明日の仕事の時牢屋から出て瞬間から始める。」

それだけ言うと和輝ツルハシで魔石を掘り始めた。

「了解」

ガルダもそれだけ言うと魔石を掘り始めた。


決行日

「ガルダ分かっているな?」

「勿論」

「そろそろ来るぞ」

すると和輝達の牢屋に看守が近づいてきた。

「おいどうした早く出ろ」

「すみません少し足を挫いてしまって、すまんガルダ肩貸してくれ」

「お、おう大丈夫か?」

「大丈夫といえば嘘になるけどまぁいけるよ」

そしてガルダが和輝に肩を貸し牢屋から出る。

そして看守が和輝達に背中を向けた瞬間、和輝が看守に素早く詰め寄り手枷の鎖の部分で首を締めた。

「ぐっ貴様」 

「おい黙って鍵を寄こせ」

「誰が貴様なんかに」

看守が全力で和輝を解こうとするがビクともしない

「何故貴様みたいなガキを振り解けないっ」

「良かったなガルダお前みたいな大男もこの看守様からしたらガキに見えるようだぞ」

「何っ?貴様いつの間に!」

そう初めから和輝は看守の首に掴まったところで振り解かれるのは分かっていた。だから初めからガルダに首を締めてもらい、その間に和輝がカギを奪う作戦だったのだ。

「貴様らみたいな奴隷が脱走できると思う…な…よ…」

それだけ言い残すと看守は気絶した。

「良しカギも手に入ったし早速枷を外しましょうかね」

「おう」

と手に入れたカギで和輝は自分の枷とガルダの枷を外した。

「いっけね忘れ物したっガルダ少しの間周りを見張っておいてくれ」

「しゃあねぇな」

すると和輝は急いで戻った。

「すまん待たせたな」

「何してたんだ?」

「少し秘密兵器の確認だよ」

「そんなもん持ってねぇだろ」

「それはどうだろうね。まぁとりあえず進むよ」

「はいはい」

と二人は先に進んだ。

実は廊下を進んで少しすると上に上がるための階段がある。

「俺達は今最下層だ。上に行くまではかなり時間がかかる。しかし早めに行かなければならない、そうしないとバレるからな。しかしどうしたら良いか?簡単だ看守を全員ボコす。以上」

「和輝、お前ってたまに一人で喋るから怖えよ」

「気にしない気にしない」

「はいはい。しかしボコすと言っても相手は一応武器持ちだどう対処する?」

「そうだな、確かガルダには少しだけだが物理耐性があったよな」

「ああ」

「まずお前が戦闘で相手にタックルしろ。逃した奴は俺が対処する」

「まぁそれでいくかあまり時間もねぇしな」

そう言うとガルダは勢いよく階段を上り目の前に現れた看守にタックルした。

「何だ貴様は?」

とガルダに銃を向けた看守たちだが一瞬で倒れた。

「足元ちゃんと見よろ」

「おうやったか?」 

「おうやったか?じゃねぇ!お前どんだけ階段上る気だ!おかげでほぼ出口じゃねぇか!」

と息を切らしながら言う和輝。

「まぁ良いじゃねぇか」

「まずいな他の看守共が上がってきたぞ」

「どうする隠れるか?」

「いやここで潰す。報告されたら面倒だ」

そう言うと和輝は臨戦態勢には入った。それを見たガルダも臨戦態勢に入り上って来た看守達を次々と倒していった。


「流石に疲れたちょっと休憩で」

「賛成だ」

今、和輝達は城まで上がり近くにあった小部屋で休憩している。

「そういえば和輝はここを出たら何をするんだ?」

と、突然の質問に和輝は驚きながら質問に答えた。

「俺はとりあえず冒険してみるよ帰る場所も特に無いしね。ガルダは何をするんだ?」

「俺は特に決まってねぇな」

「なんじゃそりゃ」

「ガルダ恐らく今からここは戦場になるだろう。今頃看守達は俺達を探して地下を彷徨ってるから問題は無いんだが、あの金ピカ男が今のところ何もしてこない、まるで何かを待ってるかのような気がする。」

「あぁ俺もそう思う」

すると突然小部屋の壁が破壊され白いロボットが部屋に侵入してきた。するとロボットから聞いたことのある声が聞こえた。

「あぁその通りだよゴミ共!まぁここまで上がってくるとは思わなかったけどな。しかしお前達がここから脱走するなんて不可能なんだよ。でも、ありがたいと思え今からお前達はこの新兵器の第一犠牲者になれるんだからな!!」


「さぁてガルダ、金ピカ男の登場だ。二人でこの男を倒してコイツの言う不可能を潰してやろうぜ」

「おう!」

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