アースドラグ出航
数分後、再び浮上する感覚があって止まった。
動き出した時と同じ機械的な声が船内に響く。
「ダイバースクールドッグ到着。自動航行モード完了。」
1つのパネルが外部を映し出す。
そこにはギンの工場裏倉庫と同じように四角く掘り下げられた穴があり、そこに浮上したようである。
ただ、内壁はもっと立派であり、しっかりとした設備であるように見えた。
穴のそばにゴルドンとカオルが立っているのを見つけたギンは1つの管を掴むと叫んだ。
「カオル、ゴルドン、ハッチ開ける。乗れ!」
と同時に梯子とタラップを使って潜地艇上部に向かう2人がモニタに映る。
ギンが操作すると先程ケイ達が乗り込んだハッチが解放される、シューという音とともに重い金属が動く音が聞こえた。
モニタ上でハッチが開き乗り込む二人が映ると、間髪入れず梯子を降りる音がして2人が乗り込んでくる。
「すまん、助かる!」
「ギン、ありがとう。遭難者はスクール卒業したてのダイバーみたい。早く助けないと危ないわ。」
「話は後だ。席につけ。」
ギンはいいつつ、先ほどまでワンが座っていた操縦席と思しき二列目の席に座り直した。
ワンは二列目から一列目の席に移り、地図らしきものが映る画面を見始める。
空いた三列目、四列目の席に向かうカオルとゴルドンは五列目に座るケイに気づき、それぞれ声をかける。
「あら、その席に人が座ってるのは久しぶりね。」
「おお、伝言助かった。後で礼を言わせてもらう。」
ケイには返事する余裕もなく、こくこくとうなづくのみ。
2人も返事を待たずに席に座る。
ワン、ギン、カオル、ゴルドン、ケイの順番で座った。
カオルは慣れた手つきで長い耳に耳当てのようなものを当てる。
ゴルドンは計器を見つつ、細かいレバーを少しずつ調整していた。
「潜航前チェック開始!」
ギンが大きく声を発した。
「同地率、魔力確認!」
「同地率現在90%。メタルからの魔力供給も安定しとる。問題なしじゃ。」
「対地魔力反響装置、空気確認!」
「アースソナー感度良好。空気残量も問題なしよ。」
「航路確認!」
「13ぽいんと地下ノ地図準備シタ。ダイジョウブ。」
ケイは物語の世界に、いきなり放り込まれていた。
地底の覇者。人間とドワーフとエルフが地潜艇に乗って地中を冒険する物語。
地中を潜り、泳ぐ船は彼等が乗ることで大地の竜となる。
高鳴る胸が抑えられない。最前列の席で舞台を見ているような気分だった。
確認を終えたギン。
操縦桿を握りながら、宣言する。
「地潜艇アースドラグ。潜航する!」
地潜艇が大地に向かって出航した。
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