メタルギルドへの届け物
それから三日後。
ギンの工場でケイは手伝いをしていた。
あれから勉強も進めているが、いまいち進みが悪い。
ほんの前提がある程度知識がある人向けなのか、わからない単語が多数出てくる。
調べようにも調べ方もわからないほど、専門用語で溢れていた。
「ギンさん、あの本なんだけどめちゃくちゃ難しいよ」
「ということは坊主、まだまだアースダイバーとして活動できる土台にも立ててないってことだな。」
「そっか、そういうことになるのか。。」
「地道に勉強しておけ。潜るつもりなら命懸けだからな。」
気圧されながらもうなづくケイ。
軽く言っているが言葉が重い。
「まあ、仕事時間は仕事するんだな。」
「はーい」
「っとそういえば」
ギンは思い出したように倉庫に向かう。
戻ってきたギンが手に持っていたのは魔道呼吸器だった。
「これ、魔道呼吸器?すげえ、初めて見た」
「まあ、元がすごく高いからな。しかも俺が改造した最新型だ。」
「ギンさん、そんなことできるの?」
「バカタレ。坊主、俺の職業は技師だぞ?こっちが本職だ。」
初めてみる魔導呼吸器に感動するケイ。
魔導呼吸器とは、魔力を注ぐことで空気を発生する魔道機のことである。
空気を魔力で圧縮し、タンクと呼ばれる入れ物に封入。
魔力を注入し、タンクの圧縮した空気を少しずつ外に放出する仕組みだ。
発生した空気を潜地服の管を通して口元まで持っていき地中でも呼吸可能とする。
アースダイブするだけであれば魔道呼吸器無しでも潜れるが、長時間の活動ができない。
金属発掘のためにはある程度長い時間潜らないといけないため必需品と言える。
「初めて見た、思ったよりも小さいね。」
「まあ改造の主な目的が小型化だからな。普通なら1.5倍は大きいぞ。」
「へえ。」
「だがそれでも空気の量は普通の型と比べても1割減。9割確保した。なかなかの自信作だ。」
「う、うん。」
「今回の工夫はそれだけじゃなくてな。」
技術の話になると目の色を変えて説明するギン。聞き手に徹するケイ。
ケイはこういう話を聞くのが好きだった。
何を言っているのかわからないことも多いが、生き生きと話すギンは楽しそうだし、物語のようでもあった。
延々と続きそうだったがギンはふと我にかえる。
「っと、いかんいかん。しゃべり過ぎてるな。そうじゃなくて仕事の話なんだ。」
「これはメタルギルドからの依頼品でな。坊主、この前メタルギルドでテスト受けたんだよな?」
「うん。」
「じゃあ、場所わかるだろ?これ持っていってくれないか?」
「えええ。でもどうすればいいのかわからないよ。」
「正面受付で、この手紙を見せて、依頼の品を届けにきたと言えばいい。」
「わかった。誰宛って言えばいいの?」
「依頼主はゴルドンだ。ゴルドン宛と言えば通じる。」
「わかったよ。行ってきます。」
ケイは魔道呼吸器を袋に入れて担いだ。
大体10kgよりもちょっと重いくらいで普通に担いで歩けるサイズだ。
魔道呼吸器を直接見て触ることができた喜びを噛み締めつつ、メタルギルドにケイは向かった。
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