彼氏が初めてフェイスマスクを使った話
ふと、最近肌のザラつきが気になって、久々にフェイスマスクを使った。私は基本的に、肌の調子が悪い時のスペシャルケアとしてフェイスマスクを使っているが、その話を何気なく彼氏にしたら「俺も使ってみようかな〜」なんて言い出す。
「あー、そういえば誕生日プレゼントでフェイスマスクあげたもんね」
以前から使ってみたいと言ってたから、今年の誕生日プレゼントの中にフェイスマスクを入れておいたことを思い出す。そういえばまだあれ一回も使ってないんじゃないか?
「あ、確かに。貰ってたわ」
っておいおい。
「忘れてたんかい」
てっきりあるから使ってみようかなって言ったんだと思った。
「それじゃあ、今日使ってみようと思います」
ビシッと背筋を伸ばして敬礼するもんだから、ついつられて私もビシッと敬礼してしまった。同じく額に手を当てて「はい、是非使ってみてください」なんて。はたから見たら絶対おかしなカップルだろうな、私たち。
その日の夜、宣言通りフェイスマスクを使おうとそそくさとお風呂から出て部屋に戻っていく彼。
「俺、パック使いたいから先に行ってるね!」
「あ、うん!わかった~」
ゆる~い返事をして、私もそろそろ行こうと湯船から上がる。すると、ダダダダダッとこちらに戻ってくる足音が聞こえた。
「パックって、化粧水の後だっけ!?」
何かと思えば、そういうこと。
「うん。私は化粧水の後に使ってるよ」
「導入化粧液使って、化粧水塗って、そのあと?」
「そう」
「わかった!ありがとね~!」
するとまたダダダダダッと物凄い足音で帰って行く。忙しい人だなあ。
私は今日はパックはしない為、そのまま洗面所でいつも通りのスキンケアをして部屋に向かった。もう10分くらいは経つし、そろそろパック終わるくらいかな~?なんて考えながら戻る。
「どう?いい感じ?」
きっと、真っ白な顔をこっちに向けて、にやにやしながら見て!とか言ってくるんだろうな~と思っていたのだが、私の予想は大きく外れた。
「さーちゃんたすけて~」
部屋に入るなり泣きそうな声でそう言われ、予想だにしていない反応に戸惑う。
え、どうしたの…と、彼の顔を覗き込んで私は目を丸くした。
「え!?」
そこには、どう見ても付け方を間違ってぐしゃぐしゃになったフェイスマスクを頑張って無理矢理付けようとしたと思われる顔が。
…私はフェイスマスクとか、特に付け方迷ったことなかったから、まさかそんなこともあるのかと、予想外過ぎてちょっと笑ってしまいそうになったが、彼はとても大真面目にやっているのでここは絶対に笑っちゃいけないところだと必死に笑いをこらえる。「直して~」と眉を下げながら子犬みたいな表情で言ってくる彼が可愛くて、でもしばらく1人で奮闘していたところを想像すると何だか物凄く可哀そうで、私は「待ってね~、今直してあげるからね」とまるで子供をあやすように言って、彼に向き直った。
「やーくんこれ、鼻出すところから口出てるよ~!これはこうして、こうだね。よし、できた!」
私が直してあげてる間、目を瞑りながら必死にこうなってしまった経緯を説明する彼の姿はまるで子供のよう。こういったところは年下らしいんだよね。まあ、1個しか変わらないけど。
彼曰く、面倒臭がって鏡を見なかったのが原因らしい。…確かに、初めてで鏡を見ずにつけるのは、ちょっと大変かもしれない。フェイスマスクってひたひたに美容液が染み込んでるから、すぐあっちこっちくっついちゃうし、広げるのも結構一苦労だもんね。それで結局鏡見て直そうとしたけど直せなくて、そんな時に私が来たらしい。普段は割と何でもできるタイプなのに、こういう所では意外に不器用な彼氏くん。そんなところも可愛いよ。…ちょっと笑っちゃいそうになったけど。
…ところでさ、フェイスマスクとフェイスパックの違いって何?
調べてみたけど、どれも表現が違うだけで同じものなんだって。一応使ってるやつにはフェイスマスクって書いてあったからそう書かせて頂きました。会話の中ではパックって言ってたからそれはそのまま。
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