第7話 迷路3

放課後。

私は授業終了とともに即特別棟へ向かっていた。クラスで数人に話しかけられたけど「ごめん。ちょっと急いでるから」という感じで流してきた。

もちろん急いでいるには訳があって……。


「先輩!」


私が特別棟の教室に入るとちょうど先輩も着いたところだったのか。席に座るところだった。


「……元気だな」


そんなことを言いながら先輩はこちらを見ていた。


「そーです。私は元気なのです。だから今日は先輩が返事をするまで話しかけ続けます」

「勝手にどうぞ」

「もちろんです勝手に見て勝手に話し続けますから。返事をしない限り……」


と私が言っていると先輩は本、いやいつものパズル雑誌ですね。今は迷路をやっている先輩。ってか水曜日にしていた大きな問題は終わったんですね。はいはい。あれデカかったですからね。ってか完成したのをみたいんですけどー。めっちゃ綺麗なイラストでしたよね?途中までしか私見ていなかったような……。


って……。


――あれ?


「うん?私今普通に先輩と話した?先輩返事しましたよね?あれ?」

「……」


うん。先輩はまた新しい問題に入ったため……返事なし。この先輩なんなんだー!


ってか地味に過去最多の会話しなかったかな?めっちゃ話した。話せた気がするんだけど……。


って、今はマジでまた返事しないし!なんなのー。やっぱアホでしょ!馬鹿でしょこの先輩。


「……馬鹿先輩」


と私が言っても先輩は新しい問題をスラスラと……完全に自分の世界の中に居ますね。あー、ホントなんなんですかね。この先輩は。


水曜日は完全無視で帰ったと思ったら。今日はとっぱじめから話して。パズルにまた没頭。謎ですよ。この先輩謎すぎます。


――実は恥ずかしいから?私がかわいいから恥ずかしくてパズルに逃げてる?って、先輩の顔を覗き込んでもマジでこっちは見なくて。パズルしてるよ。って、あー、今先輩がしてる迷路多分動物だ。かわいい。うん、かわいい。すごいなー。ただ迷路なのに最後にはちゃんとイラストが出来る。うん。問題を作っている人すごいですね。


って、あれ?私今一度だけ声出てた?あれー?うん。気のせいかな。大丈夫大丈夫。


まあまたこれが終わるまで待ちますかね。


私は水曜日に放置していった椅子に座り先輩を観察。ってか水曜日から全く動いていないのでこの教室普段から本当に誰も来ないんですね。ってか使わないからか。忘れられているのか。鍵すらそういえば放課後も閉められてないですよね。


とか思いつつもまあとりあえず先輩を観察です。


今日もパズルをしているのは変わらないので……他を観察します。

えっと……くせ毛かボサボサかしりませんが。マジで美容院連れて来ましょうかね。絶対この先輩もっといい感じになると思うんですよねー。ちゃんとした方が絶対いいのに……なんでボサボサなんでしょうね。あれかな人を寄せ付けない為にわざと?いや……単にパズル馬鹿だからですかね。そういえば先輩家ではどんな生活しているんですかね。家でもパズルばかり?あっ、そういえば火曜日と木曜日はなんで来ないんでしょうかね?


ってか。先輩の姿をよく見たら姿勢良く座ってパズルやってるんですよねー。まるで試験中みたいに。疲れないんですかね?ってかこれは部活?先輩が勝手にしてる?それもまだわかってませんね。ってかほとんどわからないことだらけですね。


って、でもなんでこんなにピシッとしてるんですかね。っかピシッとするなら。髪もピシッとしませんかねー。なんかおかしいというか。ずれているというか。ホント謎。


とか思っていたら。

先輩は一問終わったみたいですね。そして珍しいことにこちらを見たので目が合いました。そして……。


「あのさ。馬鹿先輩ってなに?」

「はい?」

「……」

「……」

「……」

「……」


あれー?声に出てましたか。

これはこれは……心の中でごめんなさい。ちょっと汗たらーですよ。馬鹿先輩とか言ってましたが。先輩なんですからね。ってか沈黙はダメですよね。とりあえず何か言わないと……。


「そ、それは馬鹿先輩ですからね」


って、また言っちゃったー!


「……」


さすがに先輩ずっとこちらを見ていますね。見ていますよ。どうしましょうかね。怒られますかね?とりあえず……。


「あ、悪い意味じゃないですからね。超集中してる先輩が返事してくれないからですよ。ほら、現に先輩話してくれたじゃないですか。馬鹿先輩と私が言ったことで。だからこれはその先輩がこちらを認識するためにしたことでして。本当に馬鹿とか言っているのではありませんから」


って、私は何回連呼してるんだー!一応馬鹿先輩ですが。仮にも先輩。先輩に私は何を言っているんだー。ですよね。謝れねば。と、思っていたら……。


「お前。おもしろいやつだな」

「……は?」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……それだけ!?」


その後に何か言葉があるのかと私は待って居たのですが……特になし。そして多分言いたいことを言い終えた先輩は次の問題にって、なんなんだー。

この先輩本当なんなんだー。って、おもしろいやつとか私初めて言われましたよ。


私基本かわいい、美少女。しか男子には言われないんですけどー、初ですよ。おもしろいとか。まあ……嫌な気分ではありませんが。なんか突然言われたので変な感じですね。


ちなみに先輩は本当に違う問題へともう進んでいて私の方は見ていません。パズルの方を見ています。


なので返事はなく……そのまま時間が進んで行き……。


♪♪~


チャイムまた鳴ったー。ですよ。


が、今日はちょっといつもと違った。チャイムが鳴ってすぐに片付け。逃走するだろうと私が思っていたら。先輩は片付けながらだったがこちらを見て…。


「……気をつけて帰れよ」

「……あ、はい」

「……じゃ」

「はい」


あれ?なんか普通のやりとり。あれ?と、私が思っていると先輩は……消えた。


帰って行きましたね。


って、今日の先輩なんなんだー。なんか調子狂うー。今までのスルー。無視から急になんかちょっと話してくれて挨拶まで最後していきましたよ。あれ?なんか先輩の中で私の認識変わりました?ってかやっと認識ましたか?


ってまあ……やっぱ先輩の方がおもしろいですよ。と心の中で私はつぶやいておいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る