第10話つまるところ、それはただの近未来⑩
「動物と話せる能力、か。」
なるほど。そういう能力があったとしても不思議ではない、な。
「で、それとうちを襲撃したのと何が関係あるんだ?」
「ああ、それはね。あんたたちが、動物たちを殺しまくってたから懲らしめてやろうと思って。」
凶暴化してた動物をか。
「それもそうだけど、凶暴化していない動物たちもだよ。普通に保護区で暮らしている動物。」
保護区。AIによる統治から、離れた場所。その場所から、AIが統治しているここには入れないし。逆にここから保護区には入れない。
生きている人はあまりおらず、動物が生きる場所、として民衆には知られている。が、実態として犯罪者など何らかの事情でここにいられなくなった廃れた年に住み着いている。
「もしかして、保護区に住んでたりしたの。」
「・・・・ノーコメントで行くわ。」
・・・・よく見れば、彼女の服はかなりボロボロである。しかし、、、、うちのやつらが倒した、と。
「保護区には絶対行ってないぞ。というか、行けないし。」
「嘘をつかないで。その服に輝いてる星を私見てたんだからね。」
「見間違えだという可能性は?」
「そんなことではない、、、はず。」
目を瞑って、もう一回思い出してみるようだ。
「うーん。いや、あんたたちのマークよ。星に一本線が、、、」
「一本線?」
ただの星マークなはず。
「学生自警団のマークはこれだよ。」
胸のバッジをとって見せる。
「あれえ?でもその人たち町中で凶暴化した動物を殺してたんだけど・・・」
「そもそも、学生自警団は動物愛護団体からやいやい言われないために動物殺してないし。」
どうも、証言が食い違う。
「ちょっと待ってね。」
彼女は、犬を抱き上げた。
「ほら、フェンリルも。星に一本線のマークつけた人が動物を殺しているのを見たって言ってる。」
うーん。
「まあ、それはいいや。あと聞きたいことが一つあって。なんか、強い動物が次々現れてんだが、それもお前の動物か。」
急に現れたんだよな。
「そうね、私の友達。」
「じゃあ、その動物に・・・」
「友達!!!!!!」
食い気味に、突っ込んでくる。
「友達に言って、ここに来てもらえないか。僕たちと殺し合いをしているかもしれない。」
「まさか。人間じゃないんだから、食べない限り殺しはしないわよ。」
殺しは、、、、ですか。
学生自警団本部に、隊員と隊長たちが続々と帰ってきた。ところどころ、制服に血がついている奴がいるが一応帰ってこれたようだ。それに続いて、鹿、カラス。イノシシなどが部屋に入ってくる。部屋が小さくなったようだ。
「ねえ、あなたが足を凍らせた熊を開放してほしいんだけど。」
「ああ、いいけど。熊はさすがにこの部屋には入れないから、そっちに行くぞ。」
さて。彼女をとりあえず、保護し。隊長たちは会議を始めることとした。
「で、どうする。彼女。実被害は宝石ぐらいなんだろ。AIにひき渡すほどじゃないよな。」
というか、面白いから渡したくないし。
「いままで、人は捕まえたことがなかったわよねえ。喧嘩を仲裁したぐらいかしら。」
大きい胸を揺らしながら彼女は言った。そうなんだよなあ。
「別に、金にかかわってこないなら引き渡さなくていいんじゃないですか。金がかかわってくるんなら、話は別ですけど。」
「私、その子と話してないのよねえ。」
「じゃあ、彼女に対しての処分は学生自警団に入っての奉仕活動無期限でいいか?」
異論はなし、と。というわけで、彼女への処分はそれに決まった。
「さて。」
彼女がいる部屋へと戻ってきた。もう、彼女は動物たちと自分の家のようにリラックスしていた。
「こういう結果になったわけだけど。なんか、ある?仲間になったんだからある程度の要望ぐらいは聞くよ。」
彼女は、寸分の迷いもなくこう答えた。
「もちろん、動物たちの改善待遇だわ。ただ、私が来たからには凶暴化した動物に悩ませられる心配は、ないわよ。」
胸を張って、彼女は言った。
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