第9話つまるところ、それはただの近未来⑨
彼、小代は今日出勤日ではなかった。のに、夕方に「出勤を命じられて腹を立てている最中である。
「もちろん、バイト代は弾んでもらえるんだろう。がんばれ小代。」
しかし、あいつーータイプεのアイツが、かなり焦った声をしていたのには驚いた。他の隊長もいるはずなのに、何をしているのだろうか。
いつものように、西門から入ろうとする。が、そこにはいたのだ。何かが。
「お、オオカミ?」
ニホンオオカミは絶滅したはず・・・
「やっちゃいなさい。フェンリル!!!!」
かわいらしい少女の声がそばで聞こえてきた。
「え?」
フェンリルと呼ばれた生物が動き出す。
「マジかよ!!!いきなり戦闘か!!!!」
これはボーナスだな、と思いながら彼は自分の能力を使う準備を始めた。
闇夜に光る、その生物はいよいよ彼の首元を狙おうと最高速度で走ってきていた。
真白は三方の敵にどうにか対処し、西門へと向かっていた。小代がそちらで戦闘をしているのはもう知っている。
「小代!!」
倒れているかれの服は無惨にも打ち破られていた。
「ああ、あんたか。大丈夫だぜ。血も出てないし。」
そう言って立ち上がる。
「ほら、あそこに犬と女子高生がいるだろ?」
指さした方向を見ると、、お。たしかに一人と1匹がいる。犬は、バナナ食ってるな。
「あいつ、多分事情知ってるぞ。もしかしたら、主犯かもしれない。」
どうやら、重要参考人と言ったやつらしい。
「「きみ、こっち来なさい。」」
「ひっ。」
少女の顔が凍りついた。
真希は、その瞬間イノシシを倒したはずだった。が、イノシシはそれを物ともせず前方へとかけていった。
「え?」
野生の本能とか言うやつだろうか。しかし、私がイノシシの急所に当てようとしていることを見てからだと間に合わないはず。
「まあ、いいや。」
彼女の仕事はイノシシを追うことだ。
「どうぞ。」
会議室に急遽作った面談室のようなところでその少女とは対面した。小代に、お前の方が優しそうという理由で最初は俺が話す。
「えっと。じゃあ、なんでこんなところにいたか話してくれるかな。」
彼女は、少し暗い顔をしていたがまつ毛が長く、目鼻立ちが整っいて美人であった。薄命美人という名が似合う。そんな彼女は、下唇を噛んで何も答えなかった。今にも泣きそうな目をしながら、体を震わしている。
「えっと、、、」
こういう場面に遭遇するのはもちろん初めてなので居心地がとても悪い。というか、男は目の前の女が泣くだけで罪悪感が湧くものだ。
「あっまて。犬っころ!!!」
小代の焦った声が外から、聞こえる。
「ワン!ワンワン!ワンワン!」
ドアの戸の前で騒がしい引っ掻き音と騒ぎ声が聞こえる。
「フェンリル!」
数秒後、部屋に犬が飛び込んできた。どうにかドアノブを回したらしい。一目散に、彼女の膝へと飛び込んでいく。
「あ、ありがとう。フェンリル。私のことを心配してくれたのね。」
少女の緊張はほぐれたようで。青白かった顔に一気に血の気が戻る。
「では、お聞きしたいのですが。なぜ、ここにいたのか教えていただけますか。」
この質問に、先程とは打って変わってその少女は拗ねたような顔をした。
「ここは、カツ丼も出ないのかしら。」
かつ丼かー。この女、急にわがままになったな。そういえば、今までで一回もそんなこと言われてなかったな。
「って。かつ丼!!!!!!!お前、留置場でのかつ丼ネタを知ってるのか!!!!!!」
もう、50年前ぐらいに廃れたネタだぞ。少女は、少ししまったという顔をした。
「別に。昔のドラマが好きだから。」
少し恥ずかしそうな顔をしており、そっぽを向く。ふうん。なら・・・
「おお、小代。5000円上げるから俺とこの子の分のかつ丼を買ってきてくれ。」
「え、いいんですか?おつりはもちろんもらいますよ。」
「ああ、いいぞ。早く頼む。」
小代は、5分で買ってきた本当に、金のことになると早い男だ。だが、、、、
「わざわざ、普通のじゃなくて安いのを買ってきた理由を教えてほしいんだが。5000円渡したんだから高いのでも3000円は余ったんだぞ。」
「へい、旦那。それしかもうないと店員に言われましたんで。」
十中八九嘘だろうが、今に始まったことじゃない。具体的に買う商品を言わなかった俺が悪いな。
「よし、他の動物はいれるなよ。」
夢だったんだよなあ。こういうの。
「ほら、かつ丼だぞ。」
肉は豚だけど。
「なんで、牛じゃないのよ。」
「俺が知りたい。」
沈黙が続く。豚のかつ丼もうまいな。
「捨てたもんじゃないわね。豚肉も。・・・・」
「それで、何でやったんだ。あんなこと。」
多分。というか、絶対犯人はこいつなのでこう質問する。
「ああ、其れね。実は私、動物と話せる能力持ってるんだよね。」
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