第8話つまるところ、それはただの近未来⑧

その少女は、動物が好きであった。いや、それはもうペットとして買った動物が家を埋め尽くさんばかりに。



他の隊長のところに、助けに行きたいがここに誰もいなくなるのはまずいので。真白は、ぼおっとお菓子を食べていた。明らかに、学生自警団に入る前より食べる量が増えている。手にべたべたとついた塩を、だれも見ていないか確認してなめる。甘いんだもん。しょうがないね。ただ、太っている気配はない。むしろ、痩せたぐらいである。


くつろいでいたところに、聞こえてきたのは鈍い音だった。まるで、

「は?」

襲ってくる衝撃に驚くことしかできない。

「警告、警告。南門、東門、北門から何者かが侵入。」

コンピュータの音声が、館内に響き渡る。

「今ここにいる人数は?」

「隊長一人、隊員14名です。そのほかは、救援や動物への対処に向かっていておりません。」

かなり少ないな。学生自警団の本部襲撃という前代未聞の出来事に対処するには。

「それぞれの門の映像をよこしてくれ。西門も含めて。」

おそらく、今学生警備団が誰もいないことも、あちらの思惑通りのはず。だとしたら、西門だけ何も来ていないというのはおかしい。

「さて、何が来てるのか・・・・お?」

来たのは動物であった。しかも、熊や鹿。そして、カラスなど。ただ、大きい。本当に大きい。人二人分ぐらいありそうな図体をしている。西門には、何も来ていなかった。これはどう考えるべきだろうか。

「警備は退避。」

すぐさま、門の警備に当たっていた隊員たちを下がらせる。


建物は壊されるが、人命には代えられんだろう。

「さて、どうするか。」

一つ一つ回って相手をすれば、倒せる。が、時間はかかるし他の場所は壊滅状態になるな。ただ、体は三つもないし。

「とりあえず、、、、、ふん!!!!!!!!」

二つの門に土の壁を創造する。これで足止めできるのは三分といったところか。そして、少しの頭痛。無理に能力を使うと頭を使うのでとても痛い。その間に俺は、北方向へと急いだ。


北方向には熊がいた。体に少し傷が入っており、返り血も体についている。

「なるほど、町田と金木をやったやつか。」

仇、というか二人とも死んでいないのだが。一応、このクマは俺が倒そう。

手に炎を呼び出す。熊は、俺の様子を注意深く見るように間を開けて立っていた。

「とりあえず、小手調べだな。」

急所を狙うのではなく、体毛を狙う。ぼおっと、炎が彼の体にともった。

「さあ、どうする。」

クマの反応を見定める、と。くまは強引に体毛をむしり取り、(痛そう。)そして、暑いからだを冷ますために池に入って水浴びをした。

「賢い。」

多分、人間も服を燃やされたらそんな冷静には対応できないぞ。

さて、次は何をしようか。口に氷をぶち込むか、それとも目に土を入れるか。あんまり時間も待ってらんないんだよなあ。あと一分で他の場所の壁も開いちゃうし。


「よし。」

熊が足を出そうとした瞬間、足ごと池を凍らせる。今は夕方だし、なかなか溶けないだろう。

「隊員三名は、このクマへと対処せよ。」

おそらく、これで安心だ。


真希はイノシシへの対処に追われていた。強化型イノシシ、とでもいえばいいのかそのイノシシは真希の身体能力と互角に渡り合っていた。パワー素早さでは彼女が勝っているが、イノシシは、急所を外している、ということもあるが彼女の攻撃を何発も耐えることができている。反対に、イノシシの攻撃は彼女への致命傷、とはいかないが骨折になるとも思われた。お互い、一進一退の攻防が続いている。

「完全に互角だから、、、負けるわけにはいかないわね。」

なぜなら、真希には人間の種としての繁栄をもたらしてきた頭があるのだから。

「よし。」

手始めに、彼女は棒切れをとってきた。

「よく見とけよ。」

イノシシは、棒を警戒して前に出てこない。

「はっ!!!!!!」

彼女は、棒を使って全力でイノシシの前にあった大きな木を叩いた。どさどさっと、その木の実や、虫などが落ちてくる。

そのすきに、彼女は闇夜の森へと消えた。


はっはっはっ。真希はギリギリイノシシが追いかけてくることができる速さで走っていた。目指す地点は、森の出口である。月明かりが見えてきた。反応して光るタイプの街灯も見える。

彼女は森へと隠れる。

イノシシが全速力で森から出てきて、、、、街灯がまばゆい光を放った。

いまだ!!!!!彼女は、イノシシの急所へと棒を突き出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る