第7話つまるところ、それはただの近未来⑦
「お、出勤だ。凶暴化しているらしい熊が森から降りてきたらしい。」
「早く行こうぜ。もう暗くなっちまう。」
高校一年生の町田と金木は、学生自警団を構成する100人の一員として熊と戦っている最中であった。
タイプεの町田が後ろで壁を作り、タイプαの金木が自分の体を駆使して戦う。この能力分担が、能力を使って戦う上での基本であった。
「よ!!!」
金木がヒット&ブローをし、ダメージを継続的に与える。彼らの感覚によると、もうすぐ、熊は倒れそうであった。
「はっ!!!!」
いつものように、とどめを刺そうと金木がこぶしをふり上げる。その手は、確かに熊に当たっていたのだ。ただし、熊は倒れなかったが。
「「え。」」
真白は、学生自警団のけが人の元へと超特急で向かっていた。任務中に重傷を負うのは初めてのケースである。
「大丈夫か?」
彼ら二人は、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
「ははは。すいません、隊長。ちょっと油断しちゃいました。」
町田が苦笑いをする。
「いやー。あそこで倒れると思ったんだけどな。ちょっと強かったのかな。」
金木は、首をひねっていた。部下、というのは大げさだろうがとりあえず二人の安全にほっとする。
「全治2週間なので、すぐに復帰できますよ。」
二人は、腕に力を入れて筋肉を大きく見せるポーズをとった。
「はは、よかったよ。」
ただ、事態はそれで終わらなかった。始まりは、三島という男子高生からの一本の連絡である。
「救援、求む。」
関東を守る九人の隊長。その一人である三島からの救援要請にみな、驚かないわけにいかなかった。
三島、という男子学生は希少なタイプβの能力者である。彼は、能力を直接的には戦闘に利用できない。それでも、彼は隊長として学生自警団を引っ張っている。それは、彼の地頭の良さが関係しているが・・・・
この猪、体毛が完全に紫になっているし、体も通常の個体よりかなり大きい。相手の攻撃が何も考えられていないパンチでなければ、とっくに死んでいた。彼には、特別に与えられた麻酔銃がある。彼は、その球を全部急所に当てているのだが、、イノシシは体が鈍ってはいるが、倒れるかというとまったくそうではなかった。
五分前に救援信号を出してはいるが、いつ来るか。大体、9人の隊長の中でもこいつを相手にできるやつは、あまり多くないというのが三島の考えだった。今まで相手にしていたのとは、格が違う。思考が滝のように流れ、そのすべてを処理していく。彼がすべてを考慮したうえで、導き出した結論は10分。最大限、イノシシに相対して時間稼ぎをしたうえでそれ以上戦っては、彼の体力がつき致命傷を負う。
「こんなことなら、拳銃も許可してもらえばよかったな。」
拳銃があればさすがにこの状況も大丈夫だっただろう。
真希が三島とイノシシが戦っている現場についたのは、その9分後であった。あちこちに血が飛び散って、彼はもう倒れそうであった。
「大丈夫!!!!!」
彼の横へと、すぐに向かう。
「ああ、お前か。なら、大丈夫だろう。気をつけろよ。」
そういって、彼は気を失ってしまった。
脈をとってみたら、安定はしているので命に別状はないと判断していいだろう。遅れてきた自分の隊の隊員に三島を託し、自分はイノシシへと集中することとした。
イノシシは、自分に向かってくる私を見てからすぐに敵と認識したようで、何の迷いもなく突進してくる。
「速い!!!!!!」
足に手痛い一発をもらってしまった。確かに、これなら彼が救援を出すのも納得である。今までの動物たちとは、強さが全然違う。
「こんなの相手に、15分も耐えていたの・・・・」
一瞬救援を出そうかと思ったが、首を振った。
「だめよ、真希。こんなことなんてこれからいくつもあるに違いないわ。この猪は、自分で倒さないと。」
そして、森の中へと走り出した。
真希が、行ったあと。学生自警団への救援要請はさらに加速した。
ある時は、カラスが厳重に守られている宝石店のダイアモンドを盗み出したり、ある時は熊がゴミ収集車を・・・
「急にどうしたんだろ。」
「なにが起こってるんだ。」
「隊長が出なくちゃいけない事案ばっかりだな。」
真希も戦っているし。9人が全員いるわけでもないので、大変な人手不足である。
「とりあえず、カラスは私が行くよ。」
「じゃあ、ここに残るのは俺だな。気をつけろよ。危なくなったら逃げろ。」
「わかってるって。」
そうして、俺はここに残った。正直、心細いがしょうがない。あとの5人を一応呼んでおくか。二人は絶対来ないだろうが、あとの3人はこの状況を話せばきてくれるかもしれない。
そうして、学生自警団の守りは手薄になった。これは、ある者の思惑通りだったのだが、、、
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