第6話つまるところ、それはただの近未来⑥

あんなことが昨夜にあってから。彼女は一応精密検査を受けに、病院へいった。当たり前というか、当然なのだが翌日は学校に来なかった。


学校からの帰り道。そのまま、真希に会うべきかどうか思案していた。入院している病院は一応知っているし。しかし、一人でいたい時もあるだろう。どうするべきか、、、、


結局その病院へと向かっている。一応、お見舞いの品としてお惣菜とりんごも一緒だ。

「あ、真白。」

病院の前の庭で真希に会った。

「お、おう。」

咄嗟に出たのはこの言葉だった。やばいな。いままで何を言おうか考えていたことが、全部飛んでしまった。

気まずい沈黙が数秒続く。

「あ、お惣菜買ってきてくれたんだ。わたし、検査で何も異常なしって分かったから。もう帰れるんだ。私の家で一緒にたべよ、、、、」

彼女は、自分の家がすでに焼けていたことを思い出す。目から、涙がポロポロと出てきた。

「ごめん。」

「別に真希が謝る必要ないよ。俺の家で食べよう。」



家に入って、彼女は少し落ち着いたようだった。呼吸もだんだんと、大きく。深く吸えるようになっている。

「ねえ。」

彼女が、いつもと同じような声で言った。

「どうした?」

俺もなるべく同じような口調で返す。

「私、見たんだ。多分、人じゃなかった。あの生き物は。」

持っていたコップを取り落としそうになる。

「それは、君の家に火をつけたのがってことだよな。」

「うん。」

人間じゃないとは、どういうことだろう。そりゃ、放火なんて監視カメラがあるから誰もやらないし。故意でやったなんてことはないと思うが。そもそも、この世界だとぼや騒ぎもなかなかこの世界ではないから珍しい。

「体格も人間より圧倒的に、大きかったし。巨大な角が頭から生えてた。」

真剣な顔で言う真希に言ったことについて考える。両親を亡くした極限状態で、幻覚を見てしまったのだろうか。

「私、学生自警団の書類、もう出してきた。」

ぐっと、こぶしを握る。

「あれが、本当に人間じゃなかったとしたらこれから世の中はまた不安定になる。私みたいな子をもう作りたくないんだ。」

「もちろん、真白に入ってくれと強制はしない。しないけど、、、入ってほしいな。私は。」



都内某会見場にて。

「ええー。こちらにいる6人と今いない3人とが中心となり、100人を統括して。警備ロボットと協力して関東地方の平穏を守ってもらうこととなります。」

すっと、前列にいる6人が起立する。

「では、質疑応答を始めようと思います。前の方から順に、ではそこの記者の方から。」

女の記者が立った。

「えっと、学生のわけですよね?ボランティアをやってもらうという認識でいいのでしょうか??????」

政府の役人は、自分が持ってきた資料に目を落としていった。

「いえ、お金を出すのでバイト、という枠になると思います。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そこからも、記者会見はつつがなく進んでいった。


真希は、記者会見が終わった後。真白の家に向かっていた。リンゴとポカリと解熱剤を持って。

ピンポーン、という音のインターホンが鳴る。

「持ってきたわよ。早く開けてーーーーーーーーーー。」

「あ、ああ。・・・・・・真希か。家の鍵はもう開けておいたから勝手に上がってよ。」

苦しそうな声が聞こえてきた。

「お邪魔しまーす。」

子供のころから、数多く上がってきた家である。真白はリビングで、寝ようとしていた。

「大丈夫?いろんなもの買ってきたわよ。」

「ありが・・とう。」

彼によると、ただのかぜらしい。彼は、風にかかっただけでいつも死にそうだ。

「あんたもタイミング悪いわよねえ。学生自警団の記者会見の日に風にかかるなんて。」

・・・・返信は帰ってこない。どうやら、疲れて眠ってしまったようだ。学生自警団の中核の9人。そのうちの一人が、風邪にやられるようでいいのか、と思ったがそれは心の中にとどめておこう。










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