第2話 転生したけど乙女ゲーにはかかわらずに生きていく!
三徹してクソみたいなトゥルーエンドに絶望しながら出社したのが悪かったのだろう。鬱々とした気分で駅まで歩いてた私は、トラックに吹っ飛ばされて死んだ。
で、愛ナナの世界に転生した。
なんで愛ナナの世界なのかと気付いたかといえば、転生した私の姿だ。世にも珍しいピンク色の髪に、精霊に愛されるという金色の瞳……うん、愛ナナのヒロインの特徴そのものだ。
ちなみに私の今の名前は『エルザ』という。ゲームでは自分で名前を付けてたけど、普通に両親が付けてくれた名前だ。
けどこの両親も、実は本当の両親じゃない。
ゲームの中では下級貴族の娘という事になってたが、学園に通うようになる一年前まで、ヒロイン(つまりゲーム中のエリザ)はど田舎で平民として生活していた。双子であるということで、私は平民として育てられたのだ。王都の学園に入学したのは、双子の姉が病弱で学園へ通うのが難しかったからだ。
つまりは身代わりだ。此処らへん、あとで問題になりそうだが、もちろん問題になる。もっとも、その問題を解決してくれたのは『悪役令嬢』のエフィリアだったのだが……。
「……考えてみれば、このまま平民として生活してればいいのよね」
5歳の小さい体で原っぱに寝っ転がりながら、私は今後の計画を立てていた。
幸い、両親は私に優しい。青い血とかそういうのとは関係なしに、普通に私を娘として可愛がってくれている。
中世の平民なんていったら過酷な奴隷みたいなイメージだが、そこはゲーム中の世界。魔法が発達したおかげで、文明レベルこそ中世だが、一部の農業や工業はやたらに発達していたりする。平民も平和に暮らせているのだ。
平民のままでも何の問題もない。
むしろ、貴族になんてなりたくない。
貴族の娘にされて王都の魔法学園に通い、もしゲームみたいな展開に巻き込まれたら……想像するだけで地獄だ。
私は成り上がり根性なんてない。地位と自由なら、断然自由がいい。
貧乏は嫌だが、幸いこの身体には貴族の血が流れているので、それなりに魔法の才能が備わっている。しっかりと勉強して魔法を鍛えれば、それなりに裕福な職に付くことが出来るだろう。
「ヒロインがいなかったら、エフィリアも幸せだろうし」
ゲーム中でも優しいエフィリアお姉様。実物に会えないのはちょっと残念だけど、私と会わないのが彼女も一番幸せなのだ。
そもそも王子様と結婚した私が幸せとは思えないし。
王宮なんてギスギスしてそうな場所、近づきたくもない。前世の職場のお局さんの何倍も面倒な連中がうろうろしてそうだし。
「よし! 『転生したけど乙女ゲームには係わらずに生きていく!』これで決まりよ!」
すっくと立ち上がり、ぷにぷにした腕を天に突き上げてうおーと決意した。
エフィリアが悪堕ち令嬢になることはないだろう。私はずっとこのど田舎で、公爵令嬢と縁のない平民として生きていくんだから。
そう思っていたのだ。この時は。
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