第36話 創立者の故郷にかける思い

 前編(とにかく初期研修医頑張ってます)にも、創立者が自身の出身である離島の医療に全力で取り組んでいる、ということを書いたが、グループ全体として、その離島の人々、特に創立者の支援者などは大切に扱われていた。


 呼吸器内科研修も終盤に差し掛かったころ、グループ本部から師匠に直接、患者さんの紹介があった。80代の男性で、肺小細胞がんの疑い、狩野部長に治療をお願いしたい、と連絡が入った。話では、VIPの方だと。本部からの指示なので、断ることはできないし、断らないのは師匠のモットーでもある。「こちらに転院させてください」と本部に連絡し、患者さんの主治医は私、ということになった(あれっ?)。もちろん、師匠もこの患者さんについては気にかけておられ、いろいろとdiscussionを行ないながら、患者さんの評価を行なっていった。


 患者さんの腫瘍の生検をしたかどうか記憶になく、何を決め手にそう判断したのか、もう記憶が定かではないのだが、診断の結果は、肺小細胞がんは否定的で、慢性骨髄性白血病の少し特殊なタイプ(正式な診断名は忘れた)と考えられた。

 調べると、そのタイプの白血病の大家が、近隣の病院の血液内科におられることがわかり、紹介状、検査データを用意し、一度その先生の外来に受診していただいた。


 数日後、その病院から返信が届き、診断は正しいと思われること、同院で加療を行なうことが可能なので、希望があればご連絡ください、とのことだった。


 師匠や、師匠を介して本部とも相談し、患者さんは10日後、そちらの病院に転院された。


 小細胞がんと悪性リンパ腫や血液系の腫瘍は、やはり鑑別が難しいと思った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る