Episode 1−11 昼行灯の煽り

 食事を終えると、3人は小島の装備を作るため王城の片隅にあるヴィッセンシャフトの工房に向かった。


 ノインが道すがら説明してくれたところによるとこの世界では5つの王国に別れていて国同士で大規模戦争を行うのは殆どないという。領土問題などは騎士団同士で正々堂々戦い、領民などに危害を加えることはないという。


 王城を出て広場を抜け、取り囲む城壁の門をくぐると、通路の左右に王室御用達の工房群が建っている。来賓向けのショールームを兼ねて造られた工房群はまるで兵器の見本市のように軒先に自慢の品を並べている。


 剣や鎧、槍や弓などに混じって銃や大砲のようなものも見えるが、どれも儀礼用のように華美な装飾が施されている。

 ヴィッセンシャフトの説明によると、この世界の銃火器などは魔法を併用して造られた軍事用は威力が小島の世界のものに比べると極端に高いが、位の高い魔導師の魔力障壁はそれらの攻撃を無効にするほどなので、主に低位の魔物狩りに使われることが多いそうだ。


 ヴィッセンシャフトの弟子達は小島からの注文を伝えられると各々自分の作業用の工房に散って行った。どうやら得意分野ごとに部門分けされているらしい。

 だがしかし、若い弟子の1人が残りヴィッセンシャフトに食ってかかっていた。


「納得できません!よりにもよってあの泥棒と同じ異界の者の装備を作るだなんてそれだけでもイヤなのに!!」


 弟子の1人・・・身長はヴィッセンシャフトより少し高く、しかし手足は細い。濃い髭を蓄えてはいるが人間なら10代に見える。


「おいそこの只人!お前の注文か!」


 小島は肩を竦め、ヤレヤレといった態度をとり、そのことが若い弟子の怒りの炎に油を注いだ。

 火器弾薬製作部門の長だというその若い弟子は、小島の注文に納得がいかないと捲し立てた。


「なんだよ、あの銃と徹甲弾に比べりゃ難しい注文じゃないだろ?」


「アダマンチウム合金の徹甲弾はヴィッセンシャフト様の最高傑作なんだぞ!銃の形態もそちらに合わせたものの筈だ!それを弾薬の威力と射程を大幅に落とせとはどういうつもりだ!」


「そんなもん当たらなければどうということはないだろうが」


 小島にそう言われて若い弟子は目を丸くした。


 人間が射撃する以上、いくらスコープの倍率を高めても射撃精度には限度がある。小島はゴ○ゴではないので、地下射撃場のような無風で天候や地形などに左右されない条件ならまだしも、自然地形の森の中で無謀な遠距離射撃をするつもりはないと言い放った。


「しかしだな・・・要求されたスペックではあれにダメージなど・・・」


 食い下がる弟子に小島はわざとらしく嫌な顔をして答えた。


「えぇ?ヴィッセンシャフトは2日で出来ると言ってたんだけど・・・もしかして出来ないわけ?」


 途端に弟子の顔色が変わる。


「あーそうだなーやっぱ無理かー確かに俺の世界でも2日じゃ絶対ムリだと思うしなー」



次の日





 そこには小島の注文通りの装備が全て並んでいた




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