Episode 1-10 昼行灯 韜晦する

「それについちゃ、俺も興味あるぜ・・・あの天才魔術師にして天才軍師のアイン様が選んだ理由は俺には判らないが、あんなに見事な射撃ができるなら充分優秀な兵士なんじゃないのか?昼行灯には見えないが」


 ヴィッセンシャフトが尋ねたが、小島は口をとじてただ苦笑いをし、飲み物を手に取った・・・動揺したのかワインを手に取ってしまい一瞬顔を顰めたが、そのまま飲み干した。


 陸上自衛隊では普通科・・・歩兵でない限りライフルスコープなどに触ることはない。その普通科であっても他国の小銃を分解したりする機会はないと言っていい。


「若い頃、少しガンマニアだったのさ」


小島はそう言うと、ノインがジト目になった、

「若い頃、少し、ね・・・」


 35歳の小島の勤務成績は、ノインと若原2佐が全ての資料を見ても、よくいるちょっと不真面目な隊員にしか見えなかった。

 だが小島の銃の知識や射撃の腕は不真面目どころではなく、明らかに普通の自衛官が修得し得ないレベルに見える。


「それはそうと」

小島は韜晦しようと、疑問を投げかけた。


「西の森ってのは魔物とやらが居るんだろ?地図や双眼鏡もないと困るし、現地の地形に詳しい人間のサポートも要る・・・それとあのア○アンマンもどきの詳しい性能が知りたい・・・できれば同じような装備が欲しいとこだが・・・」


 ヴィッセンシャフトは少しバツが悪そうにさすがに一度奪われているため他の鎧は貸せないが、ある程度の装備は希望を聞いて工房に作らせるとの事だったので、小島はいくつか質問をして装備の注文を伝えるとヴィッセンシャフトは少し驚いた。


「いや・・・そりゃまあできなくはないがな・・・2日もあれば用意できる」


 小島は少し目を丸くした。結構無茶苦茶な注文をしたつもりだったのだが、たった2日とは・・・

「一応あなたも特使の扱いだし、王様は協力をするようにと言ってくれてるの・・・私からは案内とあなたの監視を兼ねてだけど王国軍のサポート要員をつけるわ」


 ノインは少し顔を顰めながら付け加えた


「でも、あなたも逃げたりすると、王様が態度を変えなくても王城の重臣達はもう許さないでしょうね。逃げたフジイの件にしても、王城内では王国の威信を踏みにじられたと憤慨する人間のほうが多いのよ・・・これで失敗したらもう庇えないし、恐らく軍が総出で二人共討伐しに行くでしょうね」


 それを聞いて昼行灯はやれやれともう一杯ワインを要求するのだった・・・

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