Episode1-9 昼行灯 作戦会議
3人は応接室に戻ると、ノインか侍従を呼び食事を用意するよう頼むと、侍従は既に準備していた食事を部屋に運び入れた。
「一応聞くが、俺が食べても問題ないんだよな?」
「資料にはアレルギーはないとなってるけど?」
そういう問題ではないのだが・・・まあ、死ぬようなものは出さないだろうと諦めた小島はパンを手に取り、おそるおそる口に運んだ・・・少し酸味のあるどっしりとした味わいだ。
種類のよくわからない野菜のサラダととなんの肉か解らないスープを口にした。
・・・質素な味わいだが意外と美味い・・・
飲み物に手を伸ばして気がついたのは、この赤い液体はどう見てもワインだと言う事だった・・・水を要求すると、炭酸水が出てきた。
ノインとヴィッセンシャフトは平然とワインを飲んでいる。小島はアルコールに弱い訳ではないが、食習慣の違いに戸惑っていた。
「さて・・・食べながらで悪いんだけど、いくつか説明するわ・・・」
まず、逃げた藤井は、ノルドバーン王国では外交特使として招かれているという建前になっていること・・・日本とは貿易相手として国交を結び、技術や文化の交流をする予定であり、通貨ではなく金などの資源で物々交換をする予定であった。そのテストのために書籍やコンピューターなどを送った中には多量のマンガなどが含まれていた。
このため今回の人間を転移するプロジェクトのついでに、技術パフォーマンスの一環として「わかりやすい」武器などを作ったのだという。
しかしそれを藤井が持ち逃げして逃亡したため話がややこしくなる。
藤井は外交特使であるため、ノルドバーン王国の法律で裁くのは問題がある。また、ノルドバーン王国の法律では外交特使の犯罪は基本的に特使派遣元の責任、ということになるが、自衛隊側は貴重な特殊部隊の隊員をこれ以上失うのを恐れ人員を投入したがらなかった。
若原2佐が転移してノルドバーン王国に行くと、転移魔法陣を起動できなくなるため、責任を取るには誰か他の人間が必要だったことで、今回の人選になった・・・ということだ。
「ええと・・・つまり藤井を撃つのはマズイの?」
ヴィッセンシャフトが少し顔を顰めながら答えた。
「いや、撃っても装甲を撃ち抜くのは少し困難だ」
「おいおい・・・RHA1800ミリって言ってたろ?どんだけ硬い装甲なんだよ・・・」
RHAとは均質圧延鋼装甲のことで、早い話が防弾鋼板に換算してどの程度の貫通力があるかを示す値だ。1800ミリとはつまり、鉄の塊を1800ミリ貫通する能力があるということだ。
一般的に戦車砲は、RHA400〜1000ミリ程度であるのに、たった11ミリ程度の口径でこの威力は物理法則を無視したような数値だ。
「貫通させたいなら2発同じ場所に着弾させればギリギリ貫通はすると思うんだが・・・関節部分も薄い場所ではあるけど一発目は止まるはずだ・・・それと装甲を貫通できないだけで、中の人間を衝撃で気絶させる程度には吹っ飛ばせる・・・同時に胸部の魔力炉を破壊できれば機能も停止するだろう」
「・・・まあそれはなんとかするとしてだ、問題はどこに逃げたかなんだよな・・・」
「それについては、目星はついているのですけど」
ノインは藤井が逃げた先は西の森の中だという。
そこには魔物がいて、それらを狩ればあの鎧や剣の動力源になる魔石が採れるのと、藤井は空挺レンジャー出身でサバイバル能力に長けており、着ている鎧の性能ならそれらを狩るのは容易だということだった。
「やっぱエリートじゃんよ・・・勘弁してくれよ俺ただの武器科隊員なんですけど・・・」
小島が弱音を吐くと、ノインがジト目で小島を見ている。
「ただの武器科隊員は触ったこともないはずのカスタムライフルをあんなに慣れた手付きで分解調整して撃てるもんなの?槍を避けたのもまぐれには見えなかったけど・・・」
小島は痛い所をつかれた顔をした。
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