Episode1-7 昼行灯 大丈夫だ・・・問題ない
M36 チーフスペシャルとは、スミス・アンド・ウエッソン社の拳銃で・・・早い話が日本の交番勤務の警察官が持っている拳銃の原型である。
設計が古く様々な派生型があるが、渡されたのは木製グリップの初期タイプのように見えた。
「まさか参考にした文献はこ○亀とか言うなよ?俺は両津○吉じゃねえぞ・・・」
「残念!参考にしたのは・・・」
「ん?ちょっとまて」
小島は何かに気がついたようにM36を取り出した・・・
「なんだこの軽さは・・・」
「ほう、よく気がついたな・・・こいつは見た目はタダのM36だが、材質はミスリル合金製で羽のように軽い・・・」
「しかもデザインは初期型なのにJマグナムフレームだと?・・・」
「お、職人の拘りに気付くとは、なかなか見る目があるな・・・参考文献の雰囲気を醸し出すにはこの見た目にしないとどうにもな・・・あのクソ野郎は目もくれなかったがな」
小島は慣れた手つきでシリンダーをスイングアウトして空なのを確認すると、人のいない方に向け腰だめに構えて引き金を引いた。
・・・動作の全てが軽くスムーズでバランスもよく見た目と異なりカスタムリボルバーのようなフィーリングに小島は唸った。
「FBIスタイルか・・・お前さん、参考文献が何か、大体解ったみたいだな・・・」
小島は銃を箱に戻すと少し呆れた顔で応えた。
「色々疑問はあるが、俺の想像通りなら・・・こいつはデューク・ト○ゴウの・・・」
「その通り!そしてこいつが本命だ」
ヴィッセンシャフトはニヤニヤしながらライフルケースを小島に手渡した。
小島がライフルケースを開けると、見た目はM16A2のカスタムライフルが入っていた。
小島はそれを手に取ると、慣れた手付きで左手でチャージングハンドルを引き、薬室を確認すると、銃口を上に向けつつハンドルを離した
シャキーン
「おいおいこいつは・・・とんでもねえカスタムだな・・・中身はHK417かなんかなのか?」
「こいつはたまげたな・・・持っただけでそこまで解るとは・・・概ねその通りだが、ちょいと違う」
ヴィッセンシャフトは自慢げに応えた。
「お前さんの世界の銃弾は確かに高性能だが、5.56や7.62の鉛玉じゃ、近衛兵の鎧すら貫通できないし、2キロもの射程は到底望めない」
「まあ、あの槍の強度を見たらそれは納得だが」
ノルドバーン王国は、元々鍛冶の国である。
希少金属を産出する鉱山を持ち、優れた冶金技術で精錬加工するその技術は、魔法や科学と融合してさらなる発展を遂げた・・・結果、魔法に頼らずとも大理石に突き刺さる槍を作れるまでになった。
その技術で作られた鎧が通常の鉛玉で撃ち抜けるはずもない。
「こいつは対ア○アンマン用に開発されたアダマンチウム合金製のAPDSFS弾を使う・・・文字通り世界最強のスナイパーライフルだ・・・」
「アダマンチウムって・・・マジかよ・・・」
「製作当初は5.56mmのままにしておく予定だったんだが・・・どうやっても初速が足りなくて、仕方なく拡大したんだ・・・」
「それで7.62mmのHK417ってわけか・・・」
「いや、こいつは7.62mmじゃなく、.454スーパーブラックアウトという俺様特製の弾薬だ」
「そんな口径の弾なんて聞いたこと・・・ん?BLACKOUTだって?もしかして7.62mmの拡大版か?」
小島は.300ブラックアウトという弾薬を思い出していた。5.56mmSTANAG規格のマガジンを使用でき、遊底を変更することなく銃身とガスレギュレーターを変更するだけと低コストで大口径化するための弾薬だ。
「カンがいいな・・・元々こいつはHK417にM16A2に似せたストックとハンドガードを取り付けただけのシロモノだったんたが・・・思いつきで小さな戦車砲にしちまおうということで口径を最大まで拡げるためにボトルネック薬莢を止めたのさ。お察しの通り.300BLKの7.62mm版だ。」
「・・・発射圧力に耐えるバレルを作れる冶金技術があってのシロモノか・・・初速は?」
「1800メートル毎秒以上・・・射距離2000メートルで残速93パーセント 貫徹力はRHAで1800ミリってトコだな・・・」
APDSFS弾は弾丸の長さに比例して貫徹力が増すが、この数値は120mm戦車砲を軽く凌駕し、物理法則を無視しているとしか思えないものだった。
小島はこれがレーザーブレードより弱い理由が解らなかったが、、口に出す前に気がついた。
「・・・これ、ひょっとして弾を作るだけでべらぼうな金がかかるんじゃねえの?」
「・・・そこが欠点でな、3発しか弾が作れなかった・・・レーザーブレードやア○アンマンは魔石を補充すればいくらでも使えるからな・・・」
つまり、たった3発であのア○アンマンもどきを相手にしろと・・・
小島は天を仰いだ。
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