第21話 共犯

スイはハナとカイと三人で 今後の計画とその配役を話し合った

計画と言っても それはもっぱら領主の身辺の情報収集だ

カイには農家の現領主への評価と様子を

ハナには領主自身の身辺調査とその繋がった先の調査をギルドへ依頼

スイはレオの所に預けた布袋を回収してその調査報酬にすることと

シャルルの母の状態を説明して その治療法を教えて貰うこと

その後は集まった情報をもとに再度計画を練る


「っという流れでどうだろ?なにか質問ある?」

スイの問いかけにカイは首を振る

ハナは元気よく手を上げた

「はい!質問!」

「スイちゃんは馬扱えないのに どうやって馬車を動かすの?」

その問いにスイは金銭をちらつかせ

「雇う」

と一言で答えた

「今日約束した一緒に出掛ける予定はどうなったんですか!」

その問いかけにスイは手の平を向けて

「なしで」

と一言で答えた

むうぅ!と頬を膨らませて明らかな不満を態度で示すハナにスイは笑ってみせた

「あはは それについては本当にゴメン!ただハナに僕には頼れる仲間が居るんだって気付かせて貰えたから」

そう言われてハナはそっぽを向いて言う

「それ言われると ズルいなぁ」


取り敢えずの計画は纏まったのでその場はお開きになった

時刻は夕刻過ぎ 直に日が沈み暗くなる頃

スイは自分の部屋で朝まで本を読んでいた


翌朝 早くから馬車を走らせた

雇用人とは特に会話をせず馬車に揺られながら本を読み耽った


レオの小屋に着くとスイは雇用人に銅銭2枚を渡して適当に待つように指示をした

扉をノックして

「スイです 入っても良いですか?」

と聞き 暫く待っていると

ガタガタン!バサッガタンバサバササ!と凄い音が扉越しに聞こえてきた

程なくして

「ちょっ ちょーっと待っとれよ!絶対開けてはならぬぞ!」

と 聞き慣れたレオの声が聞こえた

暫く騒がしかった室内が急に静かになる

「よし!ウォッホン! もう良いぞ入られよ」

レオの許可を得て スイは扉を開けた

眼前に広がるのは 溢れんばかりの本と紙と標本etc

スイは額に手を当ててため息をついた

「レオ 僕が居なくなった途端これですか」

そう言われてレオはスイから顔をそらし

「ふん 主にはこの合理的かつ実用的な物の配置が理解出来ておらんだけじゃ」

と言いタバコに火をつけた

フゥーッと煙を吐き

「まぁちと狭くなってはおるが ホレ 楽にせい」

と物で埋まった椅子を指差す

「いえ 僕はここで大丈夫です」

そういい床に座ろうとするスイにレオは

「ならん!」

といい 慌ててスイのもとへ駆けてくる

「良いな!今すぐあっちじゃ!あっち!良いな!」

こんなにも慌てふためくレオを見るのは初めてで スイは訝しげにレオの顔を見る

「レオ 僕になにか隠してますね?」

「べ 別になにも隠しとらんよ?」

「例えば 寝室」

そうスイが言いかけたとき カチャリ と寝室の扉が開く 瞬間 レオは飛び上がるように寝室の方へ走った

しかしレオがその扉にたどり着く前に 小さな子供が姿を現した

その小さな子は膝下まであるブカブカのシャツを着ていて ふわふわで栗色の髪の毛を揺らしながらフラフラと覚束ない足取りで歩く

「ああぁ ホラホラ ベッドで寝ておれと言うたじゃろぉ」

と言いながらその子を寝室に押し込み扉を閉めて振り返る

スイは状況が理解できず レオに説明を求める視線を送った

レオは照れくさそうに小指を口元に持っていき

「スイ お主の子じゃよ」

と言った

スイは脳天に雷が落ちたような衝撃を受けた

「ぼ 僕の子?!」

「そうじゃよ?毎晩あんなに沢山出してたではないか わしが孕んだとておかしくはなかろう?」

そういいモジモジするレオ

「いや でも 一線は越えなかったですし」

「そもそも初めての時からまだ7ヶ月しかたってませんし その え?!」

レオはスイの困惑する姿を見て 徐々に悪い笑みを浮かべる

「さっきの子は二人の子じゃ そうじゃな?」

「いや でも常識で考えて無理がありますよね?」

「ほぅ わしに向かって常識を説くか」

「では 100%否定してわしを納得させてみよ」

そう言われてスイは思考を巡らすが絶対の否定は出来なかった

「否定 出来ぬな?」

「、、はい」

「認めるんじゃな?」

「、、、はい」

「よし!わしらは共犯じゃ」

そういうとレオはゆっくり寝室の扉をあけてしゃがむ

「出てきて良いぞ」

そう言われてヒョコヒョコと出てきた小さい子に手を添えてレオは言った

「わしの卵子と主の精子から作り上げた ホムンクルスじゃ」

「初めましてスイ様」

ホムンクルスと言われた子は深々とお辞儀した

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