第19話 宣言
スイは自分の理解を越える悪意を目の当たりにし 自分の知る世界の狭さを知る
同時に自分のエゴをシャルルに押し付け 彼を追い込んだこと 自分の未熟さ愚かさを悔いた
彼の真新しい傷痕は町でのスイの行動が与えた傷
無理矢理に人を助けさせ 一度殺した心を無神経に強引に起こしてしまったのもスイだ
ただただ後悔することしか出来ずにいるスイに シャルルは言う
「これが 真実だ 貴様にどうこうすることなど出来まい?」
シャルルはゆっくりと立ち上がり深く息を吸う
先ほどまで溢れていた涙は止まり 少しずつ瞳が冷めていく
スイは分かっていた 今シャルルは一言助けると言って欲しいんだということ
大丈夫 任せろと力強い言葉をかけて欲しいんだということ
それでも今スイの頭は色々な雑念が渦巻いていて 解決策など考える余裕なんてなかった
いわばパニック状態に近い
シャルルは冷めきった目でスイを横切り扉に手をかけた
その瞬間スイはその手を思い切り掴みあげる
しかし言葉が出ない
悔しくて 歯痒くて ただ力一杯手を握って体を縮めて歯を食いしばって力一杯シャルルの目を見る
シャルルは予想していなかったスイのその姿を見て込み上げるものを堪えきれず 笑った
「な なんだそれは あっはっはっはっは」
お腹を抱えて笑うシャルルを見て
スイは自分の頭がスーッと冷えていくのを感じる
そしてただただ今の気持ちを言葉にした
「シャルル様 必ずお助けします」
「方法はこれから寝ずに考えます 少し時間を下さい」
スイのそのただ気持ちを言葉にしただけのもので シャルルの目に希望の光を与えるには十分だった
「信じて 待っていて下さいますか?」
シャルルはその言葉を聞いて無理だと言いかけてそれを飲み込んだ
スイの目を見ているとなぜだか自分の心に嘘をつきたくないと思った
「本当に わたしを救えるのか?」
その問いにスイは力一杯答える
「絶対にお救いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます