第11話 知識と報酬
「スイ!ハナがおかしい!!」
カイが勢いよく入ってきて叫んだ
「ハナ?!」
カイの尋常ならざる慌てようを見て 急いでスイは駆け寄る
カイの腕に抱かれたハナは凄い量の汗をかき苦しそうに身をよじっている
それを見てスイは
「ハナ!ハナ!!」
と何度も声をかけた
「なんじゃ騒々しい」
女性もゆっくりハナに近づくと
「ただの魔力供給中の発熱じゃ 娘の身に危険はない」
「そんなことより」
慌てふためく二人を尻目に 女性はカイの腰に下げた短剣に興味を示した
「この木剣は なんじゃ?」
カイの短剣に手を伸ばす女性からカイは距離をとった
「ただの発熱って こんなに苦しそうにしているのに大丈夫なんですか?!」
スイが女性に向けて声を荒げると 女性は静かに話した
「わしの言うことが信用ならんか?」
「だってあんなに、、」
「では」女性はスイの言葉を遮り話した
「主らに何が出来る?」
「服を脱がして解剖でもするつもりか?」
「そうだな 即効性の解熱剤でも飲ませれば多少はマシになるかもしれぬな」
「まっ 金の無駄だと思うが」
「よいかスイよ 知識の無いものは知識の有るものに従う他ないのだ」
「この世界の全てに当てはまる揺らぎ様のない事実じゃよこれは」
カイは女性の話を聞き床に寝せたハナの額に手を置いた
「カイ?」
スイがカイの唐突な行動に疑問を示すと カイは言った
「難しい話しは分からない でも熱を下げれば楽になるってことは分かった」
カイは目を閉じハナの熱を下げるよう強く念じた
その手に光が宿り ハナの容態は少し落ち着いたように見える
その様子を見て女性は目を輝かせる
「ほお これは」
立ち尽くすスイを押し退け 女性はカイを凝視した
「お主 面白い魔法を使うな いや魔法とは根本が違うな 主の能力か」
「どうなっておるのじゃこの能力は?力の根源はなんじゃ?うーむ気になる」
「スイよ!見たか今の奇跡を!
知識の無いものが時折見せる知識を凌駕する瞬間じゃ!」
「何も理解出来ておらんのに解決しおったぞこやつは あっはっはっは!」
女性は腹を抱えて笑っている
「良いものを見せて貰った 名はカイと申したか?腹は減っとらんか?良ければ馳走するぞ?」
女性はカイを指差し スーッとその指を下げ カイのお腹を突いた
「察するに 先ほどの能力 主の胃袋と関係があるのじゃろ?」
不敵に微笑む女性に 二人はぎょっとして顔を見合わせた
「なぜ?という顔をしとるな」
動揺している二人をよそにカイの腰からスルリと短剣を抜き取った
「ほぉ これは見事じゃ」
カイは抜き取られた短剣を取り返そうとしたが 女性に短剣の切っ先を向けられて動けなくなった
「ふむ 軽くて良い剣じゃ」
「おおかた その娘がこの木剣に魔力を込めてガス欠にでもなったんじゃろ?」
全てを見通す女性に二人はもうなす術がなかった
「安心しろ わしは主らに危害は加えんよ ホレ返すわ」
女性はカイに短剣を返した
「言うたじゃろ?知識のある者に無いものは従うしかないと」
「知識はな その木剣に勝る武器じゃ」
女性は再度ソファに腰掛けた
「さて スイよ 依頼書を寄越せ」
我に返ったスイは依頼書の紐を解き 女性に渡した
女性はガリガリとサインを書き報酬の銀銭3枚と依頼書をスイに手渡す
「娘のこともある 今日はここで休むが良い ちと狭いがな」
「わしは隣の部屋で眠るとしよう」
女性は隣の部屋へ行きパタンと扉を閉じた
あまりの出来事に緊張状態を長く保っていた二人はその扉の音で糸が切れたようにその場にへたりこんだ
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