第8話 素材と武具作成

翌朝 三人は野営の片付けをして森へ入っていく

森といっても日が差すだけの隙間はあり 道は明るかった

「念のため松明に火をつけとこうか」

木箱から松明を取り出し火を着けるスイをハナは不思議そうに眺めた

「こんなに明るいのにどうして松明?」

「あぁ 灯りのためじゃないんだ

この先採取にいいポイントと言われていただろ?つまり非戦闘員が採取に行けないレベルの危険度なんじゃないかと思うんだ」

「ふんふん」

「こうして火種を常に保っていれば いざというとき魔法で炎を扱えるわけだ」

「なるほど!」

「っと、ストップ!」

スイの号令とともに馬車が止まる

スイは馬車が止まったのを確認して外へ出る

「早速 薬草の群生地みたいだ」

青々と繁ったミントのような植物を手に取りスイは満足げに笑った

「これなら依頼もすぐ達成できそうだ」

カイとハナもスイの採取した葉を参考に採取を始めた

「この木も凄くいい素材になりそうだ」

スイは細い白肌の木を掌でさすりながら目を輝かせている

「カイは手斧でこの木を ハナは引き続き薬草の採取を頼む」

「了解!」

「僕はこの土とこの種子と あの石もこの葉もいいぞ!あーここはなんて宝の山なんだ」

スイは既に木箱3つ分一杯にしていた


「スイちゃーん ここの薬草は大体取り終えたよ!」

「す スイちゃん?!」

「、、え?なに?」

ハナがスイを見ると顔中土で黒くして服には植物の種がみっちり刺さっていた

「ちょちょちょっと!大丈夫なのそれ?」

「どうした」

カイもハナの声を聞いて駆け寄ってきた

ハナの指差す方を見てカイはお腹を抱えて笑った

「ちょーっと カイちゃん!笑い事じゃ、、っぷ くくくっ」

二人の様子に呆気に取られていたスイは自分の服を見て声をあげた

「うわっ!凄い!なんの種だ?!貴重かもしれないぞ!」

「そっち?!あっはっはっはっは!」

「スイ 頭おかしい くっくっく」

いつの間にかスイも手を止めて笑っていた


「あーもう やめてよね 涙出てきたじゃん!」

「ごめんごめん 小さい頃から夢中になるとこうなんだ

よしっ!取り敢えず今日は切り上げて昨日の野営跡まで戻ろうか」

「そうだね あーあーこんなに汚して 今日はわたし洗濯するからカイちゃんも服脱いでね」

「んっ」

三人は木箱を馬車に詰め込み帰路についた

昨日の野営跡にまた布を敷いて今日の成果を確認する

まずは依頼の木箱

これはハナの採取した薬草で一杯になっていた

入りきらなかった分は木箱半分くらいある

「取り敢えず依頼の方はこれで十分だと思う 質も悪くない」

続いて白肌の木は10本

木箱には払った枝と葉が3箱

土が4箱 石が2箱 種子が1箱 葉が1箱

計12箱と10本の木

「うん!上出来!」

ずらっと並んだ箱を見てハナは腰に手を当て満足げだ

「うん 僕もなんの邪魔も入らずこんなに採取出来るとは思わなかった」

スイも腰に手を当てた

カイは木箱から買っておいた干し肉を取り出し噛っている

「さて!今日はまだ時間が早いけどここで朝まで過ごそうと思う」

「さんせーい!お洗濯したいし なんだかちょっと疲れちゃったよ」

「うん お腹空いた」

「僕はこれからみんなの武具の製作をしようと思うんだ」

「今日採ってきた木は魔力の許容量が凄く高いんだ 僕の拙い技術でもハナの魂包を使えば店に売ってる一級品より性能が高い魔具になると思う」

「へぇ~ どこにでもありそうな木なのにねぇ」

ハナは白い木をヒョイと持ってマジマジと眺める

「そうだね でも普通は武器に魔力を込めて作ろうなんて考えないだろうし 耐久力も大きさも中途半端なこの木を使おうと思わないのは当然と言えば当然かな

でも魂包が使えれば 上手くいけばタダ同然で軽くて強い装備を量産できる」

スイがハナの方を見てニッと笑って見せるとハナは少し照れ臭そうにした

「カイはどんな武器を使いたい?」

カイは利き手の右掌を眺めながら言った

「俺は 相手を掴んだら離さない自信がある だから左手で軽く扱える短めの剣が欲しい」

「なるほど ハナは?」

「わたしは今日スイちゃんの話し聞いてて 常に火種を維持できる杖があればいいのにって思ったよ」

「なるほど 確かにそれが可能なら凄い便利だな」

ハナの提案にスイは顎に手を当て考える

「うん やってみる価値は大いにある」

「まずはカイの短剣からかな」

そういうとハナから短刀を受け取り 木を切り出し始める

「はいはいはい!集中しちゃう前に服脱いでね!」

ハナの言葉を聞いてスイとカイは服を脱ぎ 替えの服を着た

「それじゃ わたしはそこの川で軽く水浴びしてお洗濯するね」

汚れた服を両手に抱えながらハナは川へ向かう

「覗かないでよ」

そう言いチラッと後ろを見るとスイはすでに短剣作りに熱中していた

「ん あぁ 気をつけて」

ちぇっ と呟きハナは川への歩みを再開させる


「俺は 馬のケアしてくる」

カイは馬の脚を念入りに見ている


三人がそれぞれに行動し 日が沈んだ

今日もスイが見張るつもりだったが いつの間にか深く眠りについてしまったようだ

そして 何事もなく夜は過ぎていく

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