第5話 少年の夢

僕は 物心がついた頃から度々同じ夢を見た

夢の中は背景が朧気で歪んでいたけれど その中でハッキリと見えるものがある

それは 一人の女性の姿

長く艶のある綺麗な黒髪

華奢な体

薄い眉に長い睫毛

瞳は透き通った赤

儚げな表情でうっすらと見せる笑顔

その全てが僕の心を打った

その夢を見た日の朝は胸が苦しく 暫く起き上がれないほど

最初の頃はその女性の事などすぐに忘れていた

それでも 何度も見る内に現実の世界でもハッキリとその存在を意識出来るようになった

いつしか僕は強く想いを抱くようになる


会いたい


いや 会わなければいけない そう思えるほどに彼女を想った


僕は不思議と 現実と夢がリンクすることがあった

現実の行動と状況に対して既視感を覚え この後はこうなると思ったことが起こる

といってもそれは断片的で短いものに過ぎず 予知夢や預言者のようなそれを利用して何か出来るというものではない

ただ ハッとする瞬間があるだけ

それを繰り返していると あの女性が本当に現実に現れてもおかしくはないと思えるようになった


僕は幼いながらも沢山考えた

どうすれば彼女を見付けられるだろうか

この広い世界 どんな時代に産まれてくるかも知れない彼女を見付け出すにはどうすればいいのか


答えは極めて単純で 明らかに無謀なものだった


世界を 我が物とすればいい


世界の広さも知らない幼い僕は それでも目指すことになる

全ては 夢の中の女性を 現実のものとするために

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