第4話 準備と方針
腹ごしらえを終えた三人は武器屋を目指していた
「武器屋さんかぁ なんだか冒険者っぽくなってきたね!わたし何使おっかなぁ」
ハナは終始ウキウキで足取りも軽やかだ
「あぁ いや 今回買うのは武器じゃない」
「え?じゃあ防具?重いのはやだなぁ」
「防具でもない 工具だ」
「工具?工作道具ってこと?」
「ああ といっても採取に必要な斧や短刀だな」
「そっか 薬草の採取なんて素手でするものだと思ってたよ」
「いや 中には切り口から毒液が出てくる物もあるし手では千切れないような硬い物もある それに僕のサーチを使っていい素材を採取出来れば武器も作れると思うんだ」
「ほぇ~ 色々考えてるんだ」
「まあね よし着いたぞ」
三人は武器屋の中に入っていく
「いらっしゃい!」
筋骨隆々の店主がカウンター越しに出迎えた
「おっ 随分可愛らしい客だな?お使いか?偉いねぇ」
店主が優しい笑顔を向けるがスイは気に留めず店内をぐるっと眺めた
「えっと あれとコレとそれ下さい」
「どれどれ?手斧と木槌と無名の短刀か いいぜちょっと待ってな」
店主が指定された武器を取り テーブルに並べた
「しめて銅銭6枚ってとこかな」
金額を提示されたスイは少し悪い笑みをうかべると 並んだ武器一つ一つを眺めた
「おじさん これが銅銭6枚?冗談でしょ?」
「あ?なんか文句あんのかボウズ?悪いがウチは良いものを安くってのがモットーだ!下手な交渉は無駄だぜ?」
スイは武器それぞれを指さしながら淡々と話しだした
「まずこの手斧ここが歯こぼれしているし 素材も古く耐久性に難がありそうだ 木槌は前後に1mmのズレがあり重心がしっかりしてない 短刀に至っては論外だこんな握りの悪い柄は見たことがない 出せて銅銭2枚だな」
「なんだと?!変な言いがかりはよせよ!痛い目みるぜボウズ!」
「ならば自分でしっかり確認してみろ それとも」
スイはわざと店中に聞こえるように一段と大きな声で言った
「お使いのボウズに出来る程の目利きすら出来ないのか?」
バンッ!と勢いよくテーブルを叩きつけ店主は怒りに震えた
「ボウズ 後悔すんなよ 少し待ってろ」
店主は裏へ向かった
「すすす スイちゃん!ヤバイよ!あんなに怒らせてどうするの?怖いよ!」
ハナはカイの後ろに隠れている
「大丈夫 僕の目に狂いはない そういう能力なんだからね」
スイはニッっと笑って見せた
店主は裏からルーペを持ってきてそれぞれの目利きを始めた
「んー、、、確かにボウズの言うことに間違いはないようだ しかしどれも先日仕入れたばかりの物なんだが
そうか 俺が変なもの掴まされちまってたわけか すまねえなボウズ」
店主はバツが悪そうに頭を掻いている
「しっかし こんな難しい目利き一瞬でこなすなんてやるじゃねえかボウズ!お前さん何者だ?」
「ただの目のいい冒険者ですよ」
「ハハハッ目がいいだけで目利きできるなんてこたねえよ!まあいいや気に入ったよボウズ 持ってけ」
「いいんですか?」
「ああ 今回は負けたよ 俺の面目丸潰れだ!年齢を言い訳にして鍛冶をおろそかにしたせいで目の方も衰えちまってたのかな
おかげで目が覚めたぜ ありがとよボウズ」
「いえ おじさんの鍛冶スキルも体力もまだまだ一流です 僕の目にはそう見えています あるのは気の緩みだけです」
「かぁっ 可愛げのねえガキだ ったく」
「また来いよ!特別に俺の鍛冶を見せてやっからよ!」
「はいっ また来ます」
「じゃあな!」
店主は悔しそうだが笑顔だった
店を後にした三人はそれぞれの腰に先ほどの工具をぶら下げている
スイは木槌
カイは手斧
ハナは短刀だ
「あははっ!凄いねスイちゃん!まさかお金使わず道具買えると思わなかったよ!怖かったけど」
「そうだな 僕もタダになるとまでは思ってなかった おのおじさんの男気のおかげだ」
「さて それじゃ次の目的地に向かう前にハナの魂包でこの工具を強化してもらおうかな」
「うん!いいよ!」
ハナはそれぞれ道具に手を添えて魔力を流し込んだ
「はい!オッケー!」
「ありがとう これで不良品も一級品とは言わないけど良品と同レベルくらいで使えるはずだ」
「ハナ 凄い」
「フッフーン!」
ハナは誇らしく胸を張った
「さて 次は大きめの馬車を借りて木箱を買えるだけ買おう」
「依頼以上の採取するってこと?」
「平たく言えばそうだね
あとは自分たち用の素材も採れるだけ採ろうと思う ノーコストノーリスクで資産が増えるわけだからね」
いつになく楽し気に話すスイの顔を眺めて 嬉しそうにハナは笑った
「あはは スイちゃんは昔から変な石ころ拾って遊んでたもんね」
三人は金銭一枚を使って大きな馬車と買えるだけの木箱と食料を買い 道すがら行商人や冒険者から薬草の生えている場所を聞き 目的地の当たりをつけた
「よしっ 出発だ!」
農作業で培われた馬術を持つカイが運転をし 三人は郊外の森を目指した
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