エタニティー・プリズン ・・・ 春香

 私のその決断は、私だけじゃなく、みんなまで不幸にしてしまうの。

 デモね、私にはそんな事、先の事なんて分る筈も無かった。


~ 2004年11月11日、木曜日 ~

「イヤ、嫌、いや、貴斗君そんなことを言わないで、私が大事だっていってよ。私を必要だって言ってよぉ。ねぇってばぁ」

「同じことは二度言わない。宏之と凍りついた時間を取り戻してくれ。宏之の元へ行ってやれ、奴も待っているはずだから。彼奴が必ず待っているはずだから」

 彼の言葉に刺激されたのか胸の中にいっぱい色んな思い出が込み上げてきたの。

 それは宏之君や大切な人と時間を共有したとても大事な思い出。

 目を瞑り更にその思い出と私の想いを深く、そして、深く掘り下げて行く。

 誰を必要とし、誰を愛し、愛されたいのか。

 何かが一瞬見えた。

 それから、私の心を白く温かいモノが包んで行く。

 更に、いつのまにか私は口を動かし言葉を綴っていたの。

「・・・、・・・、・・・、好き。今、私が必要としているのは、私が愛してしまった人は、宏之君じゃない」

「エッ!!?」

 詩織ちゃんは私の途中の言葉に驚き、貴斗君は何も口にしないで静かに私を見ているだけなの。

「今、わたしが愛してしまった人は貴方よ。藤原貴斗君、アナタなのっ!」

 そこまで口にすると何故か大粒の涙を流してしまっていたの。

「・・・春香・・・・・・、正気?いや違う、本気でそう想ってくれているんだな」

 黙っていた貴斗君は私の気持ちに応えてくれ様としているのか、そんな風な言葉を掛けてくれたの。だからね、正直に胸の内を彼に伝える。

「今、やっと判ったの、私の本当の想いが。詩織ちゃんに・・・、嫌われても・・・・・・、いい。香澄ちゃんに・・・・・・・・・、嫌われてもいい。二人に恨まれてもいいの。だから、お願い、貴斗君、私の傍から離れないで、私を支えて、私を大事にして、私を好きになって、私を愛して欲しいのっ!」

「止めてぇーーーっ!春香、私から貴斗を奪わないでぇえぇぇぇぇええぇぇぇっ」

 彼女もまた、私の出した言葉を聞いて大粒の涙を浮かべ、悲痛の叫びを上げていた。

 詩織ちゃんのその叫び、どれだけ彼女が貴斗君を必要とし愛しているのか私の心に響いていた。でも、それでも、私の気持ちに嘘はなかったの。

「俺を必要としてくれるんだな、俺に支えて欲しいんだな、俺に愛されたいと願っているんだな、春香?」

 彼は私の想いを確かめるように、強くそう尋ねてきた。

 私は涙を流しているけど、笑みを浮かべ、そして、懇願の瞳をして、お願いをするの。

「叶うなら・・・・・・」

「一番大切な・・・、の幼馴染みであるお前の気持ちに応えてやれそうにない。ゆるせ、詩織」

 貴斗君は私のことを受け入れてくれる様なの。だから、そんな風な言葉を詩織ちゃんに向けていた。でも、その言葉の意味を考えてしまうと、彼の心の中を最も占めているのは彼女なんだ、って理解してしまう。

 彼にとって私は二番目?それともそれ以下?かもしれないけどね・・・、それでも、私を選んでくれた事が嬉しかった。

「嫌、いや、嫌よ、貴斗そんなことを言わないで。私、貴斗がいなかったら、これからどうすれば良いの?何を目標にして生きて行けばいいの?」

「詩織、我侭を言わないでくれ、俺の性格を知っているならこれ以上俺を困らせないで欲しい」

「たぁかとぉのばかぁあぁぁあぁっ!『バシッ』」

 貴斗君の言った事に詩織ちゃんは血の涙を流しながら言葉を返し、彼の頬を強く引っ叩いていたの。

 彼女の口にしたこと、若し、私がちゃんと判ってあげられていたら、詩織ちゃんのことも、貴斗君のことも、私の事も悪い方向に導く事はなかったの。

 それからも連鎖の様に大切な友達に続く分も防げたかもしれないのに、私の我侭で詩織ちゃんから彼を奪ってしまう。

 詩織ちゃんが貴斗君にそれを丁度し終えた頃に、ここに来ると思っていた宏之君が姿を見せた。

 彼の表情は目に映る光景を見て、動揺しているようだった。

「お・・・、おっ、おい、貴斗、これはいったいどういうことなんだ?何で藤宮さんも春香も泣いてんだよっ!黙ってないで答えろ、貴斗」

「宏之君、貴斗君にそんなこと、言わないで、私が説明するから」

 私の所へ戻ってくれ様とした宏之君に今の自分の気持ちをハッキリと伝えた。

 どんな経緯で今のような状況を迎えていたのか。

 そのすべてを聞いた宏之君は彼の腰くらいの高さの位置で拳を震わせ、今にも貴斗君に殴り掛かりそうな感じだった。

「春香が俺じゃなく、貴斗を選んだっていうのか?俺は春香、お前の為に香澄と別れたんだぜっ。それなのに、こんなのってありかよっ!」

「宏之君はこの結果が不満なのね?・・・、だったら、教えてあげる。本当は誰にも話したくないけど、言いたくないけど教えてあげる・・・・・・。私が事故で入院して、目を覚まさない間、私が目を開けてアナタを見ることも、口を開いてお話しすることも、握ってくれた私の手を握り返す事もできなかったけど」

「でもね、どれだけ・・・、どのくらい、宏之君が私のために心を痛め、苦しんでいたのか・・・、知っていたの。そんな宏之君を支えてくれたのは香澄ちゃんだってわかっていたの・・・」

「それが判ってんなら、俺の所へ戻って来て呉れよっ!」

「でも・・・、でもねぇ、宏之君、あなたは、そんな事を理由に私を捨てて、香澄ちゃんのところへ逃げたのよっ!私が目覚めない間・・・、ずっとその間、見守ってくれたのは貴斗君、三年間ずっと見守ってくれたのは彼なの。この事実はどうやっても変えられないよね?」

「それは貴斗が勝手にやっていたことだろっ!俺はそんなの頼んじゃねぇよッ!」

「春香、柏木君もあなたのためを想いまして、こうしてきてくれたのですよ。どうして、彼の事を拒むのです?どうして、私の貴斗を選ぶのです?お願いです。私の貴斗から手を引いてください」

「頼む、頼まない、そんなの関係ないよっ!詩織ちゃん、そうやって貴斗君を貴女の所有物の様な言い方しないでっ!!貴斗君に失礼じゃないっ!貴斗君を束縛しすぎなのよっ、詩織ちゃんはそれに二度も、あなたは私を裏切ったの。これから先、宏之君とよりを戻して・・・・・・・・・、また、捨てられちゃうのなんって、裏切られるなんって、もう私には耐えられないヨぉーーーーーーーーーーーーっ!それに、詩織ちゃん・・・、アナタだって、貴斗君を一度は見捨てちゃっているんだよっ!詩織ちゃんが彼を見捨てなかったらっ、貴斗君、事故にあわずにすんだのにっ!それなのに、何をいまさらそんなこと言ってるのよっ!」

「なっ・・・、そっ、それは・・・」

「貴斗・・・、貴斗・・・、全部・・・、お前のせえだぁぁぁぁっぁあぁっ!」

 私の言葉を聞いて宏之君は貴斗君に対して、怒りの矛先を彼に向けてしまったの。

 詩織ちゃんは驚愕の顔を作って言葉を詰めてしまっていた。

 宏之君は拳を振り上げ、貴斗君に殴りかかろうとした。

 身を挺して貴斗君を庇ってあげ様としたけどね、私の体は怯えちゃって、そこから動く事はできなかったの。

 でも・・・、振り上げられた宏之くんの拳は力なく、その場から、下に落ち、それは起こる事はなかった。

 その時の彼の表情はとても悲しそうだった。詩織ちゃんは悲痛な顔を作り、唇をかんでいた。

 そんな二人の顔を見るのは辛いけどね・・・、イマ、私が選んだのは彼じゃないの・・・。

 三度目は、もう嫌だから。

 詩織ちゃんは押し黙ったままだった。

 みんなの会話が完全に途切れた頃に彼女は冷血な瞳を私に向け、更に、宏之君に何かを囁くと、走り去ってしまったの。

 それに続くように宏之君も。

 その二人が居なくなった後に貴斗君も、私も感情的にならない様にね、完全に冷静になってから、芝生の上に腰を下ろして、お話を始めたの・・・。でも、その会話の殆どは貴斗君から語り掛け、それに私が答えを返すという感じだった。

 その内容の中には耳を塞いでしまいたい位の事も多かった。だけどね、彼のことちゃんと知って支えてあげたかったから全部聞き逃さないようにする。

「春香、本当に俺を選んでよかったのか?」

「私に二言を言わせる気なの?」

「俺の真似するな・・・。そうか、だったら、春香にはすべて俺のすべて隠さず話す。聞きたくなかったら耳をふさいでもいい」

「うん、ありがとう。デモね、貴斗君の事ちゃんと知ってあげたいから、そんなことしないよ」

「すまない・・・。それじゃ話す・・・。始めに俺が春香、君を選んだ理由だ。多分、この事はキミにとって無礼極まりないこと・・・、かもしれない」

 それは貴斗君がどうして、詩織ちゃんの気持ちに答えて上げられなかった、と言う事だったの。

 それはね、私自身・・・、そんなの語りたくないよ。だって、可哀想過ぎるもん、残酷すぎるもん。

 私や詩織ちゃんが知らないアメリカにいた頃の貴斗君、彼はそこで極度の自閉と失語症になってしまったようなの。デモね、それを救った一人の女の人がいたみたい。

 その人と彼は結ばれたんだけど・・・、彼の目の前で・・・、これ以上は嫌。私の口からは言えない。

 その女の人は今の詩織ちゃんを鏡に姿を写した彼女の姿と同じくらい似ていた様なの。だから、彼にとって秤になんって掛けられない程に大切な詩織ちゃんを愛し、また、再び、彼が創る原因で失いたくないから私を選んだって言うのよ。

 端から見たら、貴斗君にとって私はただの詩織ちゃんの代用品の様に見えるかもしれない、失礼な事だけど・・・。

 彼の続けた言葉にそんな意味はなかった。

 ちゃんとね、私の事を大切に想ってくれているみたいなの。

 私が新しい道を選んだように、彼もまたそれを選んでいた。違う分岐点に立てば、今まで続いてきた因果を断ち切れるのではと彼はそう思ったみたいなの。

 良い事も、悪い事も、色々な総ての想いを忘れる事は出来ないけど、これからはずっと私の為に尽くしてくれる、って言ってくれた。

 それと、私を好きになった本当の理由を教えてくれた。

 それは宏之君にも関係していた様なの。

 貴斗君の初恋の人、それはもう亡くなってしまっている宏之くんの妹。

 彼女が私の小さい頃と似ている、って言うのよ。

 貴斗君はどうしてか〝ソックリさん〟と縁があるみたいだね。

 その子の面影を私に見ているらしくて・・・、ちょっぴり妬けちゃうけど、それでも私は良かった。

 こうして、すべてを正直に話してくれる、って事はね、普通に相手を想うくらいならできない事だ、って思うの。だら、私はただの詩織ちゃんの代わりじゃない、って解釈した。

 私が覚醒するほんの一瞬前、貴斗君の多くの記憶の内が流れ込んできて、彼の両親とお兄さんが亡くなっていた事はわかっていたけどね、私の両親と知り合いだったみたいな事を口にしていた。

 私も彼も生まれる前から何らかの縁があったみたいね。

 その話から私は昔、貴斗君と顔を合わせたことがあるって話してみたんだけど、彼は本当に覚えていない様だった。

 それから、彼の健康状態を聞かされた・・・。

 それは私の未来を不安にさせるようなことだった・・・。でも・・・。

 最後に貴斗君のこれから進む道を聞かせてくれた。

 それを聞くと、若しかして、私って玉の輿になっちゃうのかなって思ってしまったの。

 すべての会話が終わると、貴斗君は改めるように彼の健康状態の事を口にした。

「さっきも俺は言ったが・・・、後どれだけ生きられるのかわからない。だから・・・、その春香には・・・、いつでも笑っていて欲しい」

「貴斗君がそういうんだったら、私、約束するねっ」

 彼の話しを聞いていて、その間、色々な意味で何度も私は涙していたみたいだった。

 貴斗君、彼は今まで辛い事の方が多すぎて本当の意味で笑った事がないんじゃないか、と思って、これからはずっと彼にも本当の笑顔を作って見せてもらいたいから、目じりにまだ残っている泪を拭って、今できる限りの笑顔とその言葉を彼に贈ったの。

 私がそれを彼に見せ続ける事で、彼の命をこれからも繋ぎとめる事ができるなら・・・、ずっとその約束は守り続けることも心の中で誓ったのよ。

「無理、言ってすまん。そして、有難う」

 その言葉を彼が返してくれた後、とても小さかったけど、瞳を閉じ微笑みも返してくれていた。それから、それを開くと、貴斗君の口から彼の最愛の幼馴染みに対する警告のようなものが出されていた。

「・・・、詩織には注意しろ」

「どういう意味なの?私、わからないよ?注意しろ、って何を注意すればいいの?」

「俺にもよく分からないが・・・、ただ、そうとしか言えない」

「うん、わかった。気に留めておくね」

 貴斗君がそう言うから、どんな事なのかちゃんと理解できなかったけど、そんな風に言葉を返していた。でも・・・、それは言葉だけだった。

 ホントに彼のいった言葉を記憶の内に留めて置けば、詩織ちゃんが、とても嫉妬深く、更に執念深いことを理解していたのなら・・・。

 私は・・・。

 それから、彼に連れられて三年ぶりに彼の住むマンションへと足を踏み入れた。

 そこの中に入るのは、今回でまだ二度目なの。

 中にお邪魔すると・・・、詩織ちゃんの趣味で統一されていた。

 彼女の趣味は相変わらず変わっていないみたい。

 私も殆ど同じ趣味だったから、そのコーディネートが気になる事はなかったけど、それについて貴斗君に聞いていた。

「ねぇ、貴斗君?ここには詩織ちゃんの物、一杯あるけど、これってどうするの?」

「気になるか?」

「そんなんじゃないけど・・・。私、彼女と趣味一緒だから・・・」

「ここにもういる必要はない。帰るべきところに帰るからな。だから、詩織には悪いが処分させてもらう、今直ぐにではないがな」

「もったいないよぉ~~~。ねえぇ、私が貰ってもいい?」

「元々、俺が購入してやったものが殆どだ。春香が気にしないなら自由にしろ。お前の物は俺のモノ、俺のモノはお前の物だから」

「あぁあぁ、言ってくれる言葉、嬉しいけどね。貴斗君のそのしゃべり方・・・・・・、なんか怖いな~~~」

「春香が治せ、って望むなら・・・、変えてやる・・・。変えるように努力する」

「ウぅン、ウンッ、いいの別に。私が多くの事を望めば、絶対アナタに負担がかかってしまうと思うからいいの」

「すまないな」

「デモね、少しくらいは変えてもらってもいいかなぁ~~~って」

「そうだな、俺の傍に長くいてくれれば、少しずつ、変わってゆく、変えられるかもしれない」

 その言葉を聞いて嬉しくなってしまったから、彼に笑顔を見せてあげていたの。

 また、私のそれに彼も小さな笑顔で返してくれた。

 それから、二時間くらい貴斗君のところで体を休めてから、彼に車で送ってもらったの。


*   *   *


「アッ、春香、お帰りなさい。こんな時間までどこに行っていたのかしら?ママ、とっても心配していたのよ」

「もぉ、私、そんな子供じゃないんだから、葵ママそんな顔見せないでよぉ。それより・・・、秋人パパ、パパは帰っているの?」

「パパは今日から出張で、一週間くらいは帰ってきませんよ」

 玄関口でママと話していたら、妹の翠がほんの僅かだけ、顔を見せたけど私を避けるように直ぐに行ってしまった。

 妹とは九月の終わり以来、ちょっとした仲たがい状態になっているけどね、今はそれでいいの。だって、若し、私が貴斗君とお付き合いし始めた、ってことを知ったら翠にどんな事を言われ、何をされるのか怖かったから・・・。だから、今はこのままでいいの。


~ 2004年11月18日、木曜日 ~

 今、貴斗君と一緒に中央図書館で勉強をしていた。

 私が大学に進む、って聞かせたらね、私が苦手な教科の講義をバイトが始まる時間前までしてくれる、って返事を言葉にしてくれたのよ。だから、今こうして一緒に図書館に来ていた。

 デモね、彼がどうして自宅じゃなくて、ここまで足を運ぶのかと疑問に思ったらしくてそれを口に出して聞かれた。

 その理由を耳にした彼に少しだけ、叱られちゃった。

 その理由は、若し家に貴斗君を呼んでこんな事していたら、翠はいい顔しないだろう、って思ったからなの。

 それに対して彼は、今はそれでもいいけど、ホトボリが醒めたら、貴斗君との関係をちゃんと翠に伝えろ、って諭してきたの。でも、若し私の口からいえないって言うのであれば、彼がそれを報せるとも言っていた。

 だけどね、貴斗君の手を煩わせたくないから、きっちり自分の口から妹にお話しするね、って答えを返しておいたのよ。

 それがいつ現実のものとなるか、分からないけど・・・。

「春香、この場所で本当にいいのか?」

「ここなら大丈夫、ここから歩いて帰れば絶対に翠に見付かる事ないの。・・・、翠、この場所、近付かないからね」

「そうか・・・、気をつけて帰れよ」

「別れる時くらい、そんな心配した顔で見送らないでよぉ。笑顔を見せてね」

「心配なんだ、しょうがないだろう。でも、春香がそういうのなら」

 彼はその言葉の後に少しだけにっこりしてくれた。

「本当に貴斗君って心配性なんだから、でも、私の事を心配してくれるその気持ち嬉しいから」

 そんな貴斗君にチイーク・キスをして、彼の表情が紅くなったの確認してから、そんな彼に別れの笑顔を見せてさよならしたの。

 今日も玄関の扉を開けた時、一番初めに顔を合わせたのは翠だった。

 妹に言葉を掛けようとしたんだけど、その前に彼女は行ってしまったの。ハァ~、妹に嫌われたままなのは辛い気分だね、やっぱり。

 どうし様、貴斗君とのこと話しちゃおうかなぁ?

「春香、お帰り。そんなところにいつまでも立っていないで中に入ったらどうかね」

「アぁッ、秋人パパ、ただいまぁ~~~っ」

 帰宅の挨拶を内のパパにしながら、中に入ってゆく。

 そうだ、パパに聞こうと思ったことがあったんだっけ。

「ねぇ、パパァ、貴斗くん・・・、藤原貴斗君の両親とパパってどんな関係だったの?」

「ハァ・・・、どうして、春香がそんな事を・・・」

「そんな事はどうでも良いから、教えてよぉ」

「そうだな・・・、簡単に言ってしまえば、貴斗君のご両親が居なかったら、お前は生まれて来ることがなかった。そのくらい深い関係の方達でしたよ」

「あぁ~~~んっ、そんなのじゃちっともわからないよぉ。ちゃんと説明してよぉ、パパァ」

「フぅッ、何でそんな事を急になって・・・」

 中々、秋人パパは話してくれそうじゃなかったから、膨れて睨んで見せたの。

 そしたらね、大きな溜息をついてからそれを聞かせてくれたの。

 葵ママと秋人パパが結婚できたのは貴斗君の両親とその母親の妹夫婦のおかげなんだって、それと大学時代の大先輩で、恩師でもあったそうなの

「話はこんなものです。わかりましたか?春香」

「アリガトねっ、パパァ・・・・・・、でも、なぁ~~~んか、まだ、他にも隠していそうだけど、今日のところはこれ以上何も聞かないね」

「でも、どうして、こんな事を聞いたんだい?」

「そ・れ・は、パパにはなぁ~・いぃ・しょっ!」

 そう言葉を残して自室に戻ったの。

 若し、パパに私が貴斗君とお付き合いを始めたって教えたらどんな顔するのかなぁ~。でも、もう少しだけパパにもママにも内緒にしておこう、っと。


~ 2004年11月24日、水曜日 ~

 今日は、貴斗君、アルバイトがないって知っていたから、彼のお家で勉強させて貰う事にしたの。

 私がここへ来るたびに少しずつ、お部屋の調度品が少なくなっていた。

 それは、私が貰っていくものもあれば、彼が捨ててしまった物、リサイクル・ショップの人が取りに来て持っていってしまった物もある。

 今のこの家の中を詩織ちゃんが見たら、どう思うのかな?やっぱり、辛い、悲しい気持ちになっちゃうのかな?

「春香、何か考え事か?目が問題集に行ってないぞ?それとも集中できないのか?」

「えぇっ、ううん、ウン、別に大した事じゃなから気にしないでね」

「ふっ、・・・、そうでもなさそうだな。ここら辺で、時間も時間だ。一息つこうか」

 彼にそういわれて、部屋にあった時計を見たらお昼をちょっとすぎた頃だったの。

「もうこんな時間なんだね。それじゃ、休憩させてもらうね・・・。でも、お昼ご飯どうするの」

「少し待ってろ。簡単なもの作ってやる」

「ぇえぇえ、別にそこまでしてもらわなくていいよ。それだったら私が作ってあげる」

「センター試験が終わるまで、雑事は全部俺がやってやる。だから、今は勉強のことだけ考えていろ」

「いいの?」

「そうしろよ。そのかわり。試験、終わって無事合格したら、その時は頼んだぞ」

「うん、有難うね。それじゃ、頑張って試験合格したら、詩織ちゃんほど上手く作れないと思うけど、美味しいもの作って見せるね」

「ハァ~、何でそこで詩織を出すんだ?俺はお前を彼女の代わりだって見ているわけじゃないぞ」

「それは言葉ではわかっているけどね、どうしても詩織ちゃんと私自身を比較しちゃうの。だって、詩織ちゃん、ずるいくらいなんでも出来ちゃうから、その才能に嫉妬しちゃうの。私と違って・・・、その・・・、あの・・・、プロポーションだっていいし」

「春香は春香、詩織は詩織。彼女が春香になることは出来ない。お前が詩織になることも出来ない。だから、そんなこと気にするな。それに詩織はな、誰にも負けないくらい何時も俺の想像なんかつかないくらいに一生懸命、努力しているんだ。その結果が身になっているだけの事」

「うぅうぅ~~~、そんな事、云われてもぉ。女の子はね、前カノと自分の事を比べちゃうの。それがとっても身近な人だったりするとね・・・。それにいくら努力しても才能がなければ開花しないんだよ」

 私が貴斗君に口にしたこと、みんながみんなじゃないけど、そんな風に思っている子は私だけじゃないと思うの、それは男の子、女の子関係なしにね。

 それに他の誰かが自分より優れていて、その才能に嫉妬してしまう事だって少なからずあるはずなの。

 デモね、それで自分を卑下したり、才能のある人の邪魔をして潰そうとしたりなんってしてはいけないと思う。

 逆に才能があるからって、他人を見下す事もいけないなぁ~っても思っているの・・・。

 アレェ・・・、お話がずれてしまいましたね・・・。

「フゥ~、春香。次回、詩織とお前を比較するような事を言ったら・・・、」

「嫌ァ~~~っ、それ以上言わないでっ。わかったから、もう口にしないから。その先は言葉にしないでぇ、聞かせないでぇ~。貴斗君、って何かそういうところズルイヨっ」

「うぐっ、最後の言葉聞かなかったことにしよう。それとわかってくれたか・・・。では飯を作るから30分ほど待ってろ」

 貴斗君はそう言ってから台所へと向かった。

 彼の言いつけ通り、待つこと三〇分。

「ありがとう・・・・・・、あうぅ~~~、なんだか見た目、私なんかより上手く作っている。貴斗君にも嫉妬しちゃいそう」

「そんなこと、言うな。見た目だけだ、見た目だけ。味はどうだか知らないぞ。春香の味加減好み知らないしな・・・。それとロー・カロリーに作ったつもりだ、太る心配はない」

「あぁっ!今、貴斗君、変なところだけ言葉強調しなかったぁ?」

「フンッ、気のせいだろ。そんなこと言ってないで食べてみろ」

「気のせいではないと思う・・・・・・、いただきます」

 貴斗君がちょっぴり怖い眼で私のことを見るから、そう言って作ってくれたものを口に運び始めたの。

 彼が作ってくれたものは半熟オムライスでその上にかかっているソースはトマトケチャップでも、ドミグラスソースでも、ビーフシチューでも、イタリアン・スターチでもなく、ビーフ・ストロガノフだったの。

 それと、綺麗な盛り合わせのサラダ、見た事のないドレッシングがかけられていたの。

 どう見ても自家製っぽっい・・・。でも、その味は。

 それと、後は琥珀色のスープ。

「・・・貴斗君・・・、これ・・・・・・」

「若しかして、春香の舌に合わなかったのか?不味いなら無理して食べるな」

「ちがうの、これならね、お店に出せると思うくらい美味しいの。はぁ~~~、やっぱり貴斗君に嫉妬しちゃいそう」

「この程度の物が店に出せるって?それは料理人に失礼だ。それに俺の方が春香より出来がいいと思うなら、努力して同等にするか、超えて見せろ」

「貴斗君って、努力って言葉、本当に口癖なんだね。デモね、大学に入ってからそうなれるように頑張るからね」

「ああ、期待しないで待っている」

「ハァ~~~、どうしてそんな皮肉れた言い方してくれるの?」

「さっしろ。気長に待つ、ってことだ。長く一緒にいられるんだから、あせらず、ゆっくりとやれ、そんな気持ちを込めたつもりなんだがな」

「さっきの言葉だけじゃそんなのわかりっこないよ。でも、今わかった事があるの。今みたいな言葉だったらその逆を考えればいいってね」

「いつもそうとは限らないぞ」

「大丈夫、それくらいはチャンを察しあげるね」

 そう答えてあげると、貴斗君は小さな笑みを見せてくれた。

 食事が終わると、後片付けも彼がやってくれた。

 貴斗君には口にしないけど、私は彼と宏之君を比較して見てしまう時があるの。

 その二人は従兄弟同士で同じ血が流れている。

 似ている所もあれば違う処もある。

 宏之君と一緒に居た時の彼の長所、貴斗君にもそうなってもらいたいんだけどね、それを伝えてしまえば、彼が言う『誰かは、誰かになることは出来ない』

 その言葉を無視してしまう事になるから、絶対口に出したくないの。

 勝手な推測だけど、彼は人の持つ個性、っていうのを大事にしているんだと思う・・・。また、余計な事を考えていると貴斗君に叱られちゃうから勉強を再開しようね、私。


~ 2004年12月12日、日曜日 ~

 貴斗君の事で今日はまた一つ、新しい事を知ったの。

 それは絶対変えて欲しいもの。

 治って欲しい物だったの。だって、これから先、それが変わらないままだったら・・・女の子として辛すぎる。だから、私がそれを治す手助けのためにもっと一生懸命勉強しなくちゃいけない、って心の中で誓った日なの。

 その新しい貴斗君の事を知ったのは図書館での勉強を終えてからね、彼の家に遊びに行って、暫く時間が経った頃の事だったの。

「ねぇ?どうして貴斗君、これの先の続きをしてくれないの?私じゃ不満?しおっ・・・、えっ、と、その・・・」

 危うく〝詩織ちゃん〟って言いそうになってしまった。

 でも、何とか口に出す事はなかったけど、その後が続かなくなってしまったの。

「春香・・・、それは違う。はるか・・・・・・・・・、お前には正直に何でもはなす、って言ったからな。言いたくないけど・・・」

「嫌なことだったら、無理に話してくれなくてもいいの。だから、貴斗君、そんな顔しないでね」

「有難う・・・。でも、これから先のこともあるから・・・、話しておくべきだ」

「うん、だったら聞かせてもらうね。だけどねぇ、無理しちゃ駄目だよ」

 それから直ぐに彼は口を動かす事がなかった。

 やっぱり、言い難いことなんだ、ってわかったから、私から声を掛けて止めてもらう事にしたの。

「やっぱり、無理そうだね。もうだから、聞かないから、そんな深刻な顔しないで、ねっ、ねっ?」

「春香、シフォニーのこと話したのまだ覚えているか?」

「うぅっ、うん、おぼえているよ」

 貴斗君のためにもその女の人の為にも私はあんまり覚えていたくないけど・・・。

「それがどうかしたの?」

「だったら、話は早い。俺にとってSEXそのものがトラウマになっている、ってカウンセラーの話によるとな・・・。それにKissする事だって、ホントは俺にとっては・・・、その・・・、辛い時があるんだ。あとな、見ての通り、俺は春香なんかより頑丈な体をしている・・・。そのなんだ・・・、春香、お前のそんな華奢な体でせっ、sexなんかしたら・・・、壊してしまいそうで・・・」

「身体気遣ってくれるのはとても嬉しいことだけど。そんなにやわじゃないよ、私」

「何言っている、退院してまだそれほど経たないだろう?」

「それはぁ、た・か・と・君も一緒っ。貴斗君は私と違って本当に重傷だったんだからね」

 それからね、ちょっとだけ、聞かせてくれなくても良いことまで聞かされてしまったの。

 それは詩織ちゃんのこと。

 三年間も貴斗君の恋人だったのに・・・・・・、私が宏之君と一緒にいた月日よりも比較出来ないほど・・・・・・・・・、彼女に女として物凄く憐れみを感じちゃう話だったの。

 まあ、それだけ貴斗君のトラウマが重症だというのがわかってしまった。

「こんな駄目な男ですまないな、春香」

「気にしないで。だってそれは貴斗君のせいじゃないもんね。だから、私がその病んだ心を治して上げられるように立派なお医者さんになるから」

「すまない・・・。そして、有難う」

 彼には既に大学で何を学ぶのか伝えてあるの。

 それはね、精神科医になる事。

 どうして、その道に進むのか、理由はもうみんな知っていると思うからあえて言わないからね。

「貴斗君、そんな改まった風に言わないで。私が医者の道に進むのを決めたのはずっと前で、それがあなたの援ける為になるってわかったからもっと頑張ろうって思っただけなの。だ・か・らぁ、ついでのことなのよぉ」

「ふっ、ついでのことなら、それでもいい」

「うぅ~~~んっ、もっと嬉しそうな顔してよぉ・・・。なんか前にも同じ事されたような?」

 でも、以前と違って貴斗君はその言葉を口にした後、微笑んでくれたの。

「頑張るのはいいが無理して体、壊すなよ」

「いわれなくても、わかっています。もう、そこら辺の貴斗君の性格は大抵知りましたからね」

「流石はカウンセラーの卵だな、いつ孵化してくれるか分からない・・・。さてさて、どんなのが産まれてくるのやら。フッ、期待少々、不安重々」

「とっても失礼なこと言ってるぅ。しかもストレートにぃ。それと・・・、なんだか本意っぽいのは気のせいなの?」

「それがわかるようだったら、さっき言った言葉、逆にしてやる」

「悪口を言うそんな口は・・・」

 その言葉の後、座っている彼を押し倒し、口付けをしていた。

 そんな事をしちゃう、私。

 よくよく詩織ちゃんの苦労がわかったような気がする。

 彼女が大胆になる必要があった理由。でも、私は彼のそんな部分を治して上げられるような道に進むから、いずれは私からじゃなく、彼からそうなってくれる日が・・・。


~ 2004年12月18日、土曜日 ~

 今日は朝から、彼の家で勉強させてもらっているの。

『カチカチカチッ、カチカチ、カチカチカチッ、カチカチッ』

 精密機械のように間隔の良いキー・タッチ音が聞える。

 貴斗君は私の正面でノート型のコンピュータで何をしているのか判らないけど、それに集中している。

 私は問題の答えを考えながら辺りに目をやっていた・・・、物がなくなってきたから、だいぶ殺風景になってきた。

 貴斗君、今年が終わったらここから出て行く事を教えてくれていたの。

 彼が戻るべき場所へ帰る、ってね。

 それは詩織ちゃんや香澄ちゃん達と最も近い場所。

 色々な不安があるけど、私に貴斗君が帰省するのを止める権利ないから、それくらいの不安は自分で何と解決しなければね。

 そんな事を考えながら、問題の答えを導き出そうとしたけど・・・、出るはずがないよね。

「貴斗君、ここの場所、全然とけないよぉ~~~、どうするの?」

 集中していた彼にそう問いかけると直ぐにそれを止め、私の隣に移動して来てくれて、それを丁寧に教えてくれたの。

 それが終わった後、彼に一体何をしていたか聞いてみたの。

「さっきから、それで何をやっていたの?」

「機械音痴の春香にいったって分からない事」

「人の欠点を真顔で、しかも態と言うのは精神的虐待!」

「はいはい、俺が悪者・・・。だが、PCは大学に入って、それから先もこれを使える様にならなければ駄目だろうから、確りレクチャーしてやる、覚悟しておけ」

「できるかなぁ~、私に?」

「人間、誰でも向き、不向きはある。だが、みっちりやれば、基礎くらい何とかなるだろう。春香、お前は、お前が思っているほど、それ以上に優秀だからな」

「私のこと、褒めてくれているんだね?だったら頑張るね」

 彼がそんな言葉を掛けてくれたから、しかも、優しく微笑みながら、だから、私は意気衝天。

 今日も、貴斗君手製の料理を食べさせて貰えたの。

 一体どうやって作ったのかわからないけど、ピッツァを出されたのよ。

 それとパスタ・サラダ。

 今回もやっぱりスープ付き、鮮やか赤色の。

 これからはずっと彼に作ってもらっちゃおうかなァ~、って甘えてしまいたいくらい美味しかった。

「ねぇ、貴斗君、どうしてこんなに美味しく作れるの?学校入れたら貴斗君のために料理を作ってあげたい、って私の気持ちは意気消沈しちゃうよぉ・・・。それにどっからこれのレシピなんってもってくるのかなぁ?」

「春香が、現在持って苦手なPC。それのインターネットを使って探すんだ。後は、砂糖と塩を間違えるような味覚バカしなければ出来るだろ。包丁扱いが不器用でも、それに代わる道具、最近はかなり便利なもの多いからなそれを使えばいいのさ」

「ちゃんと包丁は扱えるから大丈夫。若し、私もインターネットって言うのを使える様になれば、レパートリーを増やすこと出来るのかな?」

「ああ、増える、増える。両手に余るくらいに。それに趣味の幅だって広がるかもしれない」

「それだったら、ちゃんと私にそれの使い方、教えてねっ!」

「もちろんさ、お前が俺の傍にいてくれるなら」

「そんな当たり前のこと、聞かないでよ、貴斗くぅ~ん」

 彼とそんな楽しい会話をして、そんな事を口にしている・・・。


~ 2004年12月23日、木曜日 ~

 私の・・・、が近付く一日前。

 今は殆ど、図書館じゃなく貴斗君の家で勉強する日が多くなっていた。

 一つだけ彼が住むこの部屋で気になることがあったの。

 それをね、勉強の合間に聞いてみたの。

「ねぇ、貴斗君、あそこの一番奥の部屋、開かない様だけど?何があるの?」

「ああ、あそこの部屋か。鍵はなくしてしまってな、開けられないけど・・・・・・・・・、ただ・・・、ただの空き部屋だ」

「貴斗君?一瞬、間が空いたような気がするけど、気のせいかな?」

「ハァ、何で俺の友達も恋人もみんな、こんなにも勘が鋭いんだ?でも、あそこは空き部屋それ以上、それ以下でもない」

「ふぅ~~~~~~ん、そうなんだぁ?貴斗君がそう言うならそう信じてあげますけどねぇ~」

「なんだ?その疑るような眼差しは?」

「へぇ~~~、貴斗君もけっこぉ鋭いんですねぇ~~~」

「ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ・・・」

「何ナノ?そのスッゴク意味ありげの溜息はぁ?」

「ああ、隠さず教えてやる。翠ちゃんの口調、お前のそれが伝染したってな」

〈ハァ~~~、やっぱりそうなのかなぁ・・・。でも、今は翠とまだ仲直りしてないのよね〉

「なんだ・・・、黙ったりして?若しかして、まだ彼女に言っていないのか?」

「えええっえ、うん、まだ話してないの。だって、それを話そうとしても妹の方から私を避けるような感じで逃げちゃうから・・・」

「頼むよ、春香。翠ちゃんはいずれ俺の本当の義妹になる。彼女とギクシャクしたくない」

「私だって、それは嫌ァ~。でもぉ、翠が・・・」

「春香が話せないなら俺が言った方がいいか?翠ちゃん、納得してくれるかもしれないから」

「それは駄目。これは私のケジメだから、私が話す。だって、妹が貴斗君の事をどう思っているか知ってるから、それを貴斗君から翠に言っちゃったら・・・その表面上では仲良く出来そうだけど・・・、きっと翠、心の中ではいい顔してくれないと思うから・・・」

「そっか。余計な事を言って悪かったな、春香」

「そんなことないよ。だって、私と翠のこと心配してくれているからそう言ってくれるのよね?」

「ああ、そうだ。それ以外なにがある」

 貴斗君が言ってくれたことに言葉じゃなく、彼の望む笑顔で返してあげたの。

 その後に彼も私のそれに同じことをして返してくれるの。

 まだまだその笑みは小さいけど、これからもっと大きく返してもらえる様に彼の為に頑張ろう、って意気を高めるけど・・・、それを見れらる事は・・・、これから先・・・・・・。

 今日の勉強の目標が終わると、貴斗君がアルバイトに行く時間が近付く。そして、彼がそこに行く前に私を家まで送ってくれるの。


~ 移 動 中 ~


「春香、明日はアルバイトないんだ・・・エッと・・・、その明日、俺とデートしてくれ」

 今日までずっと勉強ばかりで彼がどこかへ誘ってくれることはなかった。

 とても嬉しいデートのお誘い。でもセンター試験まで後二ヶ月と少ししかないの。

 絶対、それで受かりたかったから一日でも遊んじゃう訳には行かないよね・・・。

「あのな・・・、春香。頑張るのはいいことだ。家に帰ってからも必死にやっているのだろ?」

「エッ、ウン、もちろんそうだよ」

 貴斗君には言ってないけど、一日の睡眠時間、概ね一、二時間。でも、不思議と眠気がないの。体にも特に問題はないの。

 私が三年間眠っていたからだって、そんなところ、突っ込まないでねぇ。

「だったら、一日中ずっと、って訳ではないが、明日くらい俺とデートしてくれ」

「貴斗君からのお誘い、すごく嬉しいの。だから、有難うね」

「今日になって急な、誘いで悪かった」

「そんなこと気にしてないからいいの。でも、どこに連れてってくれるの?」

「それは明日になってからの、お・た・の・し・みっ!」

「ウンうん。でも、絶対楽しみにしているから、約束、破っちゃ嫌だからね!」

「春香、お前こそな」

 だけど、その約束を破っちゃうのは私の方だった。そして・・・、


~ 2004年12月24日、金曜日 ~

 私にとって運命の選択の日が訪れたの。

 貴斗君との楽しかった日々の終焉の日。

 今まで意識していなかった、誰にも話していない私の中にある三つの罪悪感が強く私の心を捉え・・・、誤った道を選んで・・・・・・、しまう日。

 貴斗君がドレスを用意しろ、って言っていたから、『ジリオンズ・スター』って言うね、貸衣装屋さんでそれを探しているところだったの。

 何着か持っていたけど、もう少し大人っぽいのを着てみたいなって思ったから・・・、そこに来ていた。

 貴斗君とのお誘いには十分な時間があったからゆっくりと見回りながら、色々と試着して、楽しんでいた。

 気に入ったのが見付かって、それを借りて、貴斗君からの連絡を待つために家に戻っていた。

 翠、今日はどこかにお出かけしている見たいの。秋人パパも葵ママも今はお仕事中。だから、家には私以外誰もいなかった。

『ティラララ‐ティラララッ、ティラララ‐ティラララッ』

 借りてきたドレスをもう一度着て、それを大きな鏡で格好が変じゃないか見ていたとき電話のベルが鳴った。だから、それを身に着けたまま電話に出たの。

「ハイ、もしもし、涼崎です」

「・・・その声は・・・、春香ね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あれっ、若しかして、もう私の声をお忘れしてしまったのですか」

 どこか棘があるような感じがするけど・・・、丁寧な口調、そして、この声。私の知っている中でそれを持っているのは・・・。

「お忘れしてしまいましたのね。少々、残念に思います。藤宮詩織と申すものです」

「そんなぁ、忘れるって事ないよぉ。ちょっと急にで、吃驚しちゃっただけだよぉ」

「その様なら、宜しいのですけど・・・、それと私とお話をしたくないからといいます理由でお電話をお切りにならないでくださいね」

〈エッ、どうして今日になって急に・・・?〉

 何を言われるのか怖かったから直ぐに切りたかった。でも、そんなこと出来るはずないの。だって、口では彼女に〝嫌いになってくれてもいい〟って言ったけど・・・、本当はそんなこと嫌だった。出来るなら、我侭な思いだけど詩織ちゃんとは友達のままでいたかった・・・。だから・・・、そうはしなかった。

「春香?今日一日中、ワタクシにお付き合いしていただけないでしょうか?」

「そっ、そんなこと急に言われてもだめだよぉ、私にだって用事はあるの」

「あらっ、若しかしまして、フ・ジ・ワ・ラ・・・、タ・カ・トさんと御用事ッ?あるいは、お媾曳きと言いました方が宜しいのでしょうかねぇ?更にそのお後はご媾合でもなさるのですよね」

「こうごう、交会、もっ、もう変な事いわないでよぉ~~~。・・・それより一体何の用事で掛けてきたのぉ。私だって忙しいんだからね」

 貴斗君が連絡してくれる、って言っていた時間はまだ、だいぶ先だけど、詩織ちゃんにはそう言葉にしていたの。

「ああぁ~~~らっ、そうでしたか?それは貴斗とのお電話待ちでぇ」

 なんか詩織ちゃんスッごく嫌に絡んでくる。

「用事がないんなら、本当に切っちゃうよ」

「その様な事をしたらお許ししませんわよっ!春香、アナタは私から貴斗を奪っているのっ。少しくらい話を聞きなさいっ!」

〈詩織ちゃん口調が変わっちゃったよぉ、この喋り方はすごく怒っているときなの〉

「わかったから、そんな口調で言わないでよぉ」

「そうして頂けるなら・・・・・・、申し訳御座いませんでしたぁ」

「それで、本当にどんな用件なの?」

「貴斗とのデートをお取り止めして、私にお付き合い願えないでしょうか」

「そんなこと出来るわけないでしょっ!貴斗君がせっかく誘ってくれたのにそれを断ったら、絶対貴斗君、悲しむもん」

「春香・・・、アナタにその様な事をお口にする権利などありはしませんのよ」

 私が選んだ言葉に、電話越しだけど詩織ちゃんが再び、怒り始めたのが伝わってきた。

 最も私が気にしている事を強く言い放ってくるの。

「貴女が私の貴斗に電話を掛けなければ、三年間も長い間、あなたに縛られる事などありはしなかったの。確かに私は彼の事を見捨ててしまいました。それは変えられない事実です、ですがっ!貴女が始めに目覚めた時、異常覚醒していなければ、私の貴斗はあの様な行動を起す事も、あの様な酷い事故にも彼はお遭いする事がなかったのですよっ!アナタのせいなのよっ貴女がもっと早く目覚めていれば柏木君はアナタから離れる事もなかった」

「香澄が彼と一緒になる事もなかったはずですのにっ!あなたは私の貴斗にその様な事をさせて置きながら私からも奪ったのよっ!・・・ですが・・・、ですが、それだけは許せます。私にも非があるのですから。大切な彼を私のせいで事故に遭わせてしまいましたから・・・、本当はアナタを責める事など出来ないのですけど・・・、しかし、ハルカッ!その様な罪深き事をして置いて、わたくしの些細なお願い事をお聞きしてくれはしないのですかっ!」

 詩織ちゃんの言われた事に、彼女は見えないだろうけど、目元に泪を一杯溜め、今にも泣きそうになっていた。

 詩織ちゃんの口を動かした通り、三年前、暇つぶしに貴斗君に電話なんって掛けなかったら、彼に三年間も罪の意識を負わせたまま、私と言う籠に彼を束縛する事はなかった。

 私が初めからちゃんと目覚めていれば、もっと早く目覚めていれば彼が事故に遭遇して病室と言う檻に拘束する事はなかった。

 私が詩織ちゃんから貴斗君を奪わなかったら・・・、どれだけ彼女が私の知らないところで悲しみ、涙を流しているのかわからないけど、悲泣と言う監獄に拘留させる事はなかったの。

 私が事故にあったその日に、若しくは一日でも早く、目を覚ましていたら宏之君と香澄ちゃんに辛い思いをさせずにすんだのに、彼がわたしから離れることもなかったのに・・・。

 それに詩織ちゃんは口にしなかったけど、妹の翠が香澄ちゃんを嫌いになることもなかった。

 妹が貴斗君をあんなに強く慕うようになる事もなかったはずなの。

 すべては私のとった行動が今日まで重厚な鉄の鎖の環ように繋がったままみんなを引っ張ってしまっていたみたい。

 今まで表面上に出てくることがなかった私の中にある罪が・・・、詩織ちゃんの言葉に答えを返すの。

「・・・わかった・・・。何処で待ち合わせすればいいの?」

「貴斗のマンションでお待ちしております。可能な限りお早く来て頂けますと、大変有難いです」

「直ぐ行くから・・・、貴斗君に連絡を入れてから行くから・・・、そこで待っていてね」

「彼にはこの事はご内密にお願いいたします。よろしいですね、春香?」

 彼女の最後の言葉・・・、頷いてしまった。

 電話を切り終えると、直ぐに貴斗君の携帯に電話を入れた。

「ハイ、もしもし、藤原貴斗です。どちら様でしょうか?」

「アぁッ、私、春香だけどね。せっかく、今日、せっかく、貴斗君デートに誘ってくれたのに・・・、そのぉ」

「急用でも、できたのか?」

「ウッ、ウン、そっ・・・そうなの・・・、ごめんねぇ」

「ハァッ、残念だな。せっかく楽しみにしていたんだが・・・、急用なら仕方あるまい。クリスマス・イヴでなくても明日のクリスマスでもいいしな」

「ほんとうに、ごめんね・・・。明日は絶対どんなことがあっても約束守るからっ、本当にごめんなさい」

「それ以上、言葉にするな」

「ウン、有難う・・・。ねぇ、そのぉ、どんな用事が出来たか貴斗君・・・、気にならないの?」

 さっき詩織ちゃんには彼にその事を伝えるな、って言われちゃったけど、つい口が滑ってそれを仄めかすような事を口にしてしまった。

「いや、気になるけど、俺はそういった事を突っ込んで聞かない性格なんだ・・・。それより急用なんだろ?急がなくていいのか、春香」

「アッ、ウン、そうだね。それじゃ、若し、その急用が早く終わったら貴斗君の家に遊びに行くから・・・、アッ、一つだけ聞いても言い?今何処にいるの?」

「外に出ている。春香にデート、キャンセルされてしまったから暫く、そのまま外でぶらぶらしている」

「私の目の届かない所で他の女の人なんか引っ掛けないでね。そんな事していたら私、大泣きしちゃいますからね。それじゃ、今度こそ、バイバイ」

 そう言い残して、電話を切った。

 これが私と貴斗君の最後の会話。

 着ていたドレスを脱ぎ、普通の服に着替えて・・・、脱いだものを返すか、返さないか、一瞬迷ったけど、どうせ明日着るかもしれない、ってベッドの上に広げて乗せ、詩織ちゃんが待つ場所へと向かった。


*   *   *


 貴斗君が住んでいるマンションの彼の部屋がある玄関口に到着すると、そこには詩織ちゃんが外で立って待っていたの。

「春香、来ていただけたようですね。ご足労かけて申し訳ありません。それとせっかくの貴斗とのお約束がありましたのに、本当にお許しくださいね」

 彼女はそう口を動かすと、頭を下げてきた。

「詩織ちゃん、そんなこと、しないでよぉ。そんな事されたら、とってもネガティヴな気分になっちゃうよ」

 そう言葉をかけると、彼女は頭を上げてくれた・・・。?詩織ちゃん何か持っている・・・。?何かの箱・・・、見覚えのある箱?

「詩織ちゃん、その箱は?」

「こちらですか?これは、春香、アナタが貴斗とのお約束をお取り止めしてくださった償いで持って参りました。貴女様が御贔屓にしています洋菓子屋さんの」

「アッ、若しかして『ガァディス・ティアー』のケーキ?」

「ハイっ、ご名答で御座います・・・。こちらにお立ちしていても意味ありませんので、中に入りましょう」

「エッ、だって、貴斗君、今出かけいるのよ。どうやって中に入るの?」

「こちらを使うのですよ」

 彼女はそう言って、鍵を取り出し、それをドアノブに差し込み、回して、扉を開けた。

「ハイッ、これで、私がこれをお使いするのはこれが最後です。これからはこの合鍵は春香、貴女のものです。お受け取りくださいませ」

「あっ、有難う・・・。でも・・・」

「どうして、その様なお顔をするのですか?今の貴斗の恋人は貴女、春香よ。そちらの正当な所有者になったのです。嬉しいお顔をして欲しいものですね」

〈若しかして、詩織ちゃんは知らないの?貴斗君がここを引き払うの?〉

「どうかなさいましたか?」

「エッ、あっ、うん、うん、なんでもないから気にしないで。ハハッ、貴斗君、私にちっともここへ連れて着てくれないから・・・、中に入るの緊張しちゃって・・・」

 そんな誤魔化しの言葉が私の口からは声になって出ていた。

 それが詩織ちゃんに通じたのかどうか判らないけど・・・。

 それからは彼女に促がされるように中に入って行く。

「アレェ?貴斗君の部屋ってこんなに殺風景だったかなぁ?私、ここへ入るの三年ぶりだから、前のこと良く覚えていないんだけどね」

 詩織ちゃんは私の言った事なんって無視して、周りをキョロキョロしていた。そして、大きな溜息をついていた。

「詩織ちゃん、どうしたの。そんな大きな意味ありげな溜息をついて?」

「何でもありませんわ。お気に召さないでくださいませ。私、こちらを召し上がれますご準備をしてまいりますので、しばらくそちらのテーブルの前でお待ちくださいね」

 彼女はそう言うとキッチンの方に向かっていたの。

 さっき大きな溜息をついたのは彼女の知っている部屋の風景と今の様子がまったく違っていた事に大きく落胆したんだと思うの。

 ここは詩織ちゃんにとっていっぱい、色々な思い出の詰まった場所のはずだから。

 詩織ちゃんが戻ってくるまでの間、何故、急に私を呼び出したのか考えたけど・・・、結局その答えは見付からなかった。

 貴斗君に言われた大事な事、忠告された事を私は忘れてしまっている。

「春香・・・、おまちどお様です。こちらをどうぞ」

「えぇっ、これって」

「ハイ、貴女様が一番お好きな、ナポレオンで御座いますよ」

「若しかして、態々、私のために朝から並んでくれたの?」

 詩織ちゃんが出してくれたのは『ガァディス・ティアー』の中でも一、二位を争う人気があって、お店に出る数も少なくてね、開店前には売られる個数より長い人の数の行列が出来てしまうの。

「ええ、そうさせて頂きましたよ」

「詩織ちゃん、有難う!本当に有難う」

「何を申しているのですか?私と貴女は親友なのですよ。当然のことです」

 ずっと嫌われていると思っていたのに・・・、そんな事なかった。詩織ちゃんは全然そんな事、思っていないみたいなの。

「どうなさってしまったのですか?泪がお流れのようですよ?」

「これはうれし泣き、ずっと、詩織ちゃんには嫌われちゃっていると思ったから・・・、だから、嬉しいから、うれし泣きなの」

「フフッ、ありがたき幸せでございます、春香。お紅茶もお冷めしませんうちにお召し上がりくださいませ」

「ウン、それじゃ、戴くね、詩織ちゃん」

 皿に乗っているケーキにフォークをいれると彼女も同じような動作を見せてくれた。

 フォークで切ったそれを口に運ぶと、彼女も同じ動作をしてくれるの。

 ティーカップの下のお皿に乗っているスプーンに置いてある角砂糖を紅茶の中に入れて、それを掻き混ぜる。

 それと同じように詩織ちゃんも手を動かしていた。

 十分に紅茶の中に砂糖が混ざったのを確認してそれを口に近づける。すると、とても甘い芳香がする。

 とても良い臭い。それを嗅ぐと・・・、一瞬意識が途切れそうになったけど、それを口に含む。

 今まで、飲んだこともないほど美味しい紅茶だった。

 至高の味、って言うのかな?

「詩織ちゃん、この紅茶美味しいっ!一体どうやって入れたの?ワタシにもできるかなぁ?」

「もちろんですよ。プライム・ダージリンといいます紅茶の葉をお使いしいたしました。それと、レミーマルタン・ルイ十三世といいますコニャックを少々。今度ご一緒に淹れてみましょうね」

「うん、そうしようね、詩織ちゃん」

 それからしばらくの間、彼女と一月ぶりに楽しくお喋りをしたの・・・。


 そして・・・・・・、どのくらい詩織ちゃんと会話した頃なのかな?

 私の頭がフラフラして来たの。

 なんだかとても眠くなってきたの。

 私は目をこすり、その眠気を取り払おうと頑張ってみた。

 詩織ちゃんに呼びかけて、お話しする事でそれを押し込めようとした。

 頬を軽く叩いて、それを覚まそうとしたの。

 でも・・・、

 でも・・・・・・、

 その眠気が去ってくれる事はなかった。そして・・・、

「春香、お休みなさい・・・・・・・・・」

 それが・・・、詩織ちゃんから贈られた最後の言葉だった。

 私は・・・・・・・・・、永遠に目覚めない闇の中に落ちて行く。

 もう二度と這い上がれない深淵のヤミへ、

 奈落すら存在しない暗闇へ、

 私は堕ちて行くの。

 私が選んだ道、違う人を選び、その人と歩む新しい道、それは間違いだったのかもしれない・・・・・・・・・・・・・・・。

 それは違うのよね。だって・・・、元からあの事故さえ起こらなければ、このような選択肢を選べる道は出来なかったはずだから。

 それじゃ、自分の選択を後悔している?

 私が自分自身で選んだ道だからたとえその結末が・・・・・・、不幸でも私は後悔しないの。

 それが責任を負うと言うものだからね。

 それに、私は本当に彼を・・・・・・・・・してしまっていたから結果がこうなってしまっても・・・。

 それじゃ、私の鎖の環に巻き込んでしまった大切な人たちに対する罪の償いは?

 残念だけど、もう私にはそれをどう、こうする事は出来ないの。

 これから先も続く不幸の連鎖を私には止める事はもう出来ないの・・・。

 でもね、若し、来世と言うものがあるなら。

 若し、繰り返される廻り逢いというものがあるなら・・・、再び、宏之君、貴斗君、八神君、香澄ちゃん、詩織ちゃん、私の妹翠、そして秋人パパや葵ママや他の大切な人たちと・・・、再び、ゆかり逢う事が出来るならば・・・・・・、今度こそ、誤った選択はしないの。

 宏之君、香澄ちゃん・・・、貴斗君・・・・・・、そして、詩織ちゃん、本当にみんな、皆、ごめんなさい。

 私に知る事は許されない、叶わないけど・・・、私は一体どんな顔で最後を迎えたのかなぁ?そして、それを最後に看取ってくれた人はいったい誰なんだろうね?

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