第2話 俺は部活に入部した...はず
高校入学して1ヶ月がたった。
学校生活にも慣れてきて、俺は毎日充実した学園ライフを送れている。わけにはいかなかった。あれから、ずっとあいつは俺の前に現れた。
「おーい、隆明。彼女また来てるぞー」
「彼女じゃねぇーし」
「おいおい、まだそんな事言ってるのか。1ヶ月間毎日登下校してるくせにさー。それが恋人同士じゃなくってなんだって言うんだよー」
「だから、そんなんじゃねぇーよ。あれから、ずっと部活の勧誘されてんだよ」
「お前まだ入ってなかったのか。俺はもう入部届け書いたぞー」
「はぁ、お前の場合冬月目当てだろ」
「それだけじゃないぞー、お前と同じ部活に入りたいんだよ」
「はぁ。なんで、お前らは俺にそこまでこだわる」
「まぁ、いいじゃないかー。はっはっはっはー」
「帰るわ」
「おぅ、また明日なー」
あれから本当に冬月 冬乃は毎日朝家の前に現れ、授業終わりにはクラスに現れた。正直この女をなめていた。適当に流していたら諦めてくれると思っていたのだが。ここまで、諦め悪い女はそういないだろう。そろそろ、嫌気がさしてきた。
「あのさ、どうしてそこまで俺にこだわるんだ?昔からの知り合いとか仲のいい友達ならまだしも」
「部活に入って頂ければ教えて差し上げますよ?」
「いや、それは入らんけど」
「入っていただければ胸触らしてあげますのに」
「もう、その手にはのらんぞ」
「流石に乗りませんか」
俺が部活に入らない1番の理由は、なぜ2人はここまで俺に固執するのかだ。正直ちゃんとした、理由さえあれば入ってもいいと思っている。なぜなら、入るだけで行かなければいいだけだからだ。しかし、この女は入るからには部活ある時は毎日出ないといけないらしい。まだ、できてすらいない部活にだ。
「はぁ、正直部活入ってやらん事もない。けど理由を教えてくれ。入るかどうかはそれからだ」
「そうですね、中学の頃のあなたを知ってるから。だけでは、不十分ですか?」
「・・・なんで、知っている?お前は誰だ?」
「私は冬月 冬乃です」
「知っとるわ!!なんで、中学の時の事をお前が知っているのかを聞いてるんだ」
「そうですね、私の祖父母の家が愛知にあり尚且つバスケが好きだから。これ以上の理由は、部活に入ってからお答えします」
「1日考えさせてくれ。明日の朝には答えを出す」
「分かりました、それではまた明日」
「あぁ、また明日な」
なぜ、あいつは俺の事を知っているのだろうか。それを知っていてなぜ部活に入れたがるのか。バスケをやめた理由までは流石に知らないと思う。けど、それを知ったらあの2人は今まで通りに接してくれるのだろうか。その事を考えながら、俺は朝を迎えた。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。(1ヶ月も続くとこんな可愛い子でも見慣れるものだなー)」
「決断できましたか?」
「・・・俺入ってやるよ部活。なぜお前ら2人が俺にこだわるのかその理由を知りたい。それを知るために一時的に入るだけだ」
「ふふっ。楽しい部活になりそうですね」
「(まぁ、これで少しは周りは落ち着くだろ)
そーなればいいな」
いつものように一緒に登校し、下駄箱で別れた。しかし、俺の苦難はここでは終わらない。1ヶ月たった今でもクラスから俺に対する煽りは続いていた。
「よぉー、リア充ー」
「いいよなー、あんな可愛い彼女」
「金本くんって見かけによらず大胆よねー」
「だから、違うっていってんじゃん。1ヶ月も経ったのによくもまぁ飽きずに言えるなー」
「よっ、有名人」
「なんだ、龍か」
「なんだとはなんだ!冬月さんじゃなくって俺で悪かったな。それでそろそろ部活決めたか?」
「あぁ、入ることにしたよ。あいつの部活」
「まじ!?やっとか!これでやっと部活ができるな!早速今日からやるんだろ?」
「さぁな。まだ入るとしか言ってないから分からん」
「そっかー、楽しみだなー」
「そだな」
「なんだよ暗いな」
正直この部活に俺は不安しかなかった。過去の俺の事は誰にも知られたくない。俺自身も思い出したくもない。昔の俺は醜く最低でクズだった。そして、そんな自分自身が嫌いでそれを否定する周りの人間も嫌いだ。
俺は探しているんだろう。誰かに自分を認めてくれて、自分を信じてくれる。どこにもいるばすのない、そんな誰かを。
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