20話 はるのひ、おもいで
「ありがとね…」
奏音が力なく呟いたその一言には僕は何も応えず、
「困ったら僕が守るから、安心して?僕はずっと傍にいるよ。」
「あの時ね、ともくんの支えがなかったら私折れてたかもしれない…だからね」
「はいはーい!若造共〜イチャコラしてないでそろそろお花見行くでよ〜!」
全ての雰囲気や言葉を蹴散らしながら小豆が声を上げた
「むぅ…あずねぇの意地悪…」
ケラケラと笑いながら奏音の手を取り颯爽と玄関に向かい姉は走り出した
「ともは荷物持ちね〜!」
やられた。
「じゃっ…じゃあ、行ってきます」
3人分の荷物を抱え母に出発の旨を伝えると
「はいはい、行ってらっしゃいな。楽しんで来るんだよ?」
と言葉をもらった。
こうして3人でお花見をするのは3回目だろうか。
僕は春が好きだ。
僕と奏音と小豆とでお花見を楽しむ
そんな特別でも何でもない日が僕は心の底から好きなんだ。
「また来年も一緒に見に行こうね!ともくん!」
「その前にまずは夏祭りがあるぞ〜!」
イベント事に全力で振り切る2人を眺めるこの時間が何より楽しいと思える。
「これからも……」
「ずっと一緒に!!」
僕がボソッと呟いた一言に奏音が応えた
晴天の空を写したような笑顔で奏音は笑う
「今のかのちゃんめっちゃいい笑顔だったなぁ……思わず写真撮っちゃった☆」
「わぁぁぁぁ!消して!消してぇぇぇ!」
まばらに人が歩く商店街を2人の少女が走り回り、その後ろを着いて行く
「真白姉弟と奏音ちゃん、いつも元気ねぇ」
「私たちまで元気貰っちゃってるわね」
と商店街の風物詩とも言える光景になっていることを当人たちは露知らず
「お願いだから消してぇぇぇ!」
「消して欲しくば私の妹になれぇ!」
「妹でもなんでもなるからぁ!」
「聞いたかとも!お嫁さん確保したでよ!」
「「!?」」
「かのちゃんもともも奥手過ぎるの!好きなら好き!そう言いなさい」
奥手のつもりはなかった。
確かに一緒に居ると楽しいけど、好きとか意識した事なかった…
耳が熱くなってきた。
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