18話 はるのひ、そのあさ その2

「むぅ…私も混ざりたい……」

そんなことを言う奏音に母が口を開く

「はい、かのんちゃん。卵焼き♡」

「わぁ!ともくんちの甘々卵焼きだぁ!」

お花見用の弁当を母が作るなか、切れ端と言うには分厚い卵焼きを奏音の口に放り込んだ。


「ぁまぁま……ぅまぅま…」

焼きたての暖かい卵焼きを幸せそうに食べる奏音を見ながら母が笑う

「あ、そうだかのんちゃん!いいものあげるね」

そう言うと母はコンロの火を消し、化粧台から小さな宝石のついたネックレスを取り出した。

「綺麗……えっ、でも、いいんですか?!」

「いいのいいの、かのんちゃんも私の娘みたいなもんなんだから!可愛くしてあげたいのよ!」


「やい、少年よ。このリビングに入る勇気はあるかい?」

「あると思うのかい?」

ドアの外から母と奏音の幸せ空間を眺めていると、母と鏡越しに視線が重なった。

「じゃあかのんちゃん、1周ゆっくり回って見せて?」

言われるままにゆっくりと回転していると、リビングの出入口で息を潜めていた僕と視線がぶつかる

「バレてしまっては仕方ない!いくぞ!灯夜!」

「なんでこうなった!」

「いつからそこにいたの〜!」

「今日はとっても賑やかねぇ」


遡ること数分、着替え終わった後に小豆に捕まり、軽くメイクを施されていた。

「とも、今日は大事な日なんだから少しくらい良い格好見せような」

「…もう、お任せコースで……」

渋々姉のお節介にかかる

「ともはイエベと言うよりはブルベ寄りだから……」

などとブツブツ呟いている小豆は本気モードだった。


「よしっ、かっこよくなった!あとは髪のセットに移るよ」

「なるべく手短に」

「お姉ちゃんに任せな!」


なんて事のおかげで普段より数段はカッコつけて居られる

「まぁ…似合ってんじゃん…?」

「お前も…その、可愛いんじゃないか?……綺麗だし」

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