12話 あさひのぼって

事故を回避してから約5分程で奏音が僕の部屋に入っていった。僕はと言えばその間ずっとトイレに引きこもっていた。

ようやく浴室の主張権が僕に渡り、1日起こったことを整理する余裕もなく湯船に沈む

「つ…っかれたぁ………」

溜まりに溜まった疲れを汚れと共に洗い流す。

「今朝起きて…朝飯食って…学校行くときに誠二に絡まれて……」

ブツブツと1日を振り返っていると、ぬるくなった湯船の中で寝落ちしてしまった。

「とも〜生きてる〜?大丈夫?」

1時間ほど経っても出てこないから心配してくれたのだろう。

小豆の声掛けがなければそのままふやけていただろう。

「ごめ、ねてた…大丈夫だから部屋戻っていいよ」

姉の優しさを感じつつ頭に泡を立てる。

「ほんと、疲れたな」

頭と身体をサッと洗い浴室を後にし脱衣所で着替える。


僕のベッドを占領してスースーと寝息を立てる奏音がとても可愛らしく、起こすのも勿体ないのでベッドに入れなかった。

ある意味の極限状態で勉強していたら、気づいたら空が白け、鳥の鳴き声が響く頃になっていた。

机に置いた電波時計が【4:30】になり、母と自分の弁当を作る時間になってしまった。


今日から毎日こうなるのだろうか。


そんなことを考えていると、仕事の準備のために母が起きてくる。

「いつもごめんね、灯夜」

「いいんだよ、母さんが1番頑張ってくれてるの知ってるから」

僕なりの親孝行、返せる恩を少しずつ返していく。

寝ぼけ眼で卵焼きを巻いていく。

一通りの弁当を作り終えたらソファに沈み込み、仮眠をとる。

「流石に寝ないと……死ぬ」


朝日が頬を差す頃には僕は意識を失い、夢の中を歩いていた。

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