11話 よもふけて

いろいろあったせいで余計に疲れたがなんとか家まで帰ってくることができた。

「ただいま……」

玄関を開けて奏音を自宅に招き入れる。

「おかえりぃ!ともやぁぁぁぁぁ!」

小豆はやはりハイテンションで出迎えてくれる。

「わぁぁ…あずねぇめっちゃ美人さんだぁ…」

「とも!あまいの!」

「ん、新商品のプリン、これでよかった?」

エコバッグからプリンを取り出し小豆に渡すと0.5秒後にはリビングへ駆け込んでいた。

「おつかいまで頼んでごめんね、灯夜。」

明日の朝食の準備をしていた母が声をかけてくれる。

「とりあえず荷物ここ置いとくね。牛乳とジュースは冷蔵庫入れとく。」

「ありがと、助かるわ」

一連の会話が終わった頃に母が「お風呂湧いてるからゆっくり浸かってらっしゃい」と労ってくれる。


奏音のお風呂はどうなるのだろうか。

僕しか彼女を認識できないが、一緒に入る訳にもいかない。

「んぁ!ほーだ!ともはへーとかいやんにゃいの?」

スプーンを咥えたまままの小豆がモゴモゴと話しかけてきた。

「おへーひゃんほひてはきょーだいでへーとかいひょーできたやふごくない?」

現代語訳すると、

「あ!そうだ!ともは生徒会やんないの?」

「お姉ちゃんとしては姉弟で生徒会長できたらすごくない?」

とのこと。

「生徒会か……弓道は続けるつもりだったけど…まぁ、推薦されたらやろうかな。」

「お!お姉ちゃんと同じ道を歩むんだな!」


長くなりそうな予感がした。

なので、奏音にしか聞こえない程度の小声で「風呂行ってこい。時間は稼ぐ。」

「でも、着替え…」

「僕のタンスから適当に着ていいから」


「なにブツブツ言ってんの〜?まさかノイローゼ!?」

「んな訳あるか」

こうなった小豆の拘束力は凄まじい。

軽く1時間は捕まっていた。

「そろそろ風呂はいって寝たいんだけど…」

明日からは通常授業が始まる。そのためにも夜更かしは出来ない。

「そっか!ごめんごめん、可愛い弟との会話が楽しくてさぁ!行け行け!綺麗になってこい」

自由奔放を人の形にしたらこうなるのだろう。


「そろそろ上がっててくれよ」

一応事故防止のために浴室のドアをノックする。

何も反応がなかったので入ろうとした時に中から

「待っ!」と聞こえた。

非常に危なかった。


後で話を聞いたら寝ていたそうだ。

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