10話 はんぶんこ

パフェとスプーンを奏音に渡し自宅へ帰ろうとした時に気付いた。

「半分ちょうだいって言ったのにスプーン1本しか貰ってないじゃん…」

「……ともくん!はいっ、あーん!」

何を思ったのか奏音が1口分のパフェをスプーンで僕に差し出す。

「早く食べて!これ結構恥ずかしいから…!」

促されるままにパフェを口の中に入れてもらう。


味なんてわかんねぇよ


白い肌がやや紅潮していくのが見えた。

…耳が熱い。

「スプーン1本しかないんだもんね…仕方ないから私が半分食べたあとこのスプーン使って……ね」

この言葉を言い終わる頃には奏音は真っ赤になっていた。


涼やかな風と溶けかけのパフェが火照った身体を冷ましてくれる。

「あ、そういえば私寝るとこ多分無い!」

突然言い放たれた言葉に耳を疑う

コンビニの駐車場でスヤスヤと寝ていたのは誰だろうか。

「とりあえずちょっとお前の家行ってみ……って誰も居ないのか…」

コクコクと栗色の髪を揺らしながら首を縦に振る。

天崎家は平日は基本的に親が仕事の都合上帰れない、そのためよくうちの母がご飯を作りに行ったりしていた。うちで食事をすることも少なくなかった。

「…とりあえずうち来るか?」

他に行く宛もなく、行ったとしても認知されないだろう。

すると奏音は琥珀の瞳を輝かせ、頭から音符を飛ばすようにスキップを始めた

「ほら、早く来ないとおいて行くよ〜!」

「パフェ食ってるからちょっと待って…」

「あっ…そっか……」

僕の手元のスプーンを見て奏音はまた頬を桜色に染めていく。


「ともくんち楽しみだなぁ〜」

照れ隠しのように昔の思い出に浸る奏音に一言補足を入れておく

「お姉居るから多分お姉の部屋は使えないかも」

「あずねぇ今までいなかったの?」

「《ずっと傍にいる》んじゃなかったのか?」

「私はともくんしか見てなかったしそれは言葉のあやだよ!」

今の発言は僕も奏音も爆発した。


「…とりあえず…帰るか」

「…はい。」


やけに川の音がうるさく感じた。

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