7話 つきあかり
姉と母、そして僕の3人で夕食を済ませ、明日の授業のために向けて予習をしていると
「とも〜ごめん…」
と言いながら小豆がノックもせずに僕の部屋へと入ってきた。
「なに、どうかした?」
「あまいの食べたくなっちゃってさぁ〜」
先程ドーナツをたらふく食べたじゃないか
とも思ったが口にするのは我慢した。
久々の実家で甘えられるのだから大目に見ようと思う。
「お金は渡すしお釣りは上げるからなにかお菓子買ってきて〜」
確かに、パジャマ姿に加え、濡れた髪のままの姉を外に出す訳にもいかない
「行くのはいいけどどういう系のお菓子がいい?」
「あまいのぉ〜でも、チョコ以外でね〜」
小さい頃から小豆はチョコレートが何故か苦手だったのをこの時思い出した。質問をしなければ危うくチョコレートを買ってくるところだった。
「んじゃあ……プリンとかでいい?」
「やった!大好き!愛してる!こんなん夫婦じゃん!」
勝手に夫にされてしまっては困る
「お姉はさっさと本当の旦那見つけなね」
「私は…ほら、アレだよ、アレまだ開花してないから男たちが魅力に気づいてくれないんだよ…」
姉の苦し紛れの言い訳に何故か涙が出そうになってしまった
「とりあえず行ってくるから、お金。僕が着替えてる間にリビングに置いといて。あと母さんからなにか買うものあったら聞いといて、一緒に買ってくる。」
「はいよ〜!」
勢いよく部屋から飛び出していった直後に
「ママ〜ともが買い物行くからなにか必要なものあるかだって〜!」
と、とても大きな声で伝言していた。
諸々支度を済ませ、母からおつかいメモを受け取るとじっくりと僕の姿を見た母が
「灯夜も随分背が伸びたね、お母さん嬉しいよ」
と、商店街のおばちゃんと似たような事を言ってきた。
日頃から感謝はしてるし、伝えるにはいい機会だと思ったから僕の想いを素直に伝えた。
「いつも美味しいご飯作ってくれるから伸びたんだよ。本当にありがとうね、母さん」
この言葉を聞いた母が瞳を軽く濡らしていた。
「もう夜も遅いんだし、早めに帰ってくるんだよ」
息子の身を案ずる母の寛大な愛を背中に受けながら玄関から月明かりの下へと歩き出した。
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