6話 おねぇちゃん!とうじょう!
千恵と誠二の気遣いに感謝しつつ食事を終え、適当にブラブラしてるとすぐに夕方になってしまった
「ちょっとちぃ送るから俺ら先に帰るぞ」
と3人で行動してるのに2人だけ先に帰るなんて薄情だと感じながらも一日の行動を終える。
夕飯の匂いが漂う深いオレンジ色の街中を1人で歩いていると、小さい頃から親しんだ商店街で様々なお店から
「ともやくんもおっきくなったわねぇ……おばちゃん、なんか嬉しいからこれもってって!」
など「進学祝い」としてコロッケや豆腐のドーナツなどをもらった。
それぞれの店主に一礼と「こんど沢山買いますね」
と口約束を交わし、帰路に着く。
オレンジ色の街も気付けば紺色や黒に変わり、夜が訪れた。
「ただいま〜…お土産あるから誰かきて〜」
「おかえりぃぃぃ!制服めっちゃ似合ってるじゃん!って、お豆腐ドーナツ!ちょーだい!」
ドドドドとリビングから駆け足のハイテンションで僕を迎えたのは姉の小豆だった。
「お姉帰ってきてたのか…ほい、ドーナツね」
「ん〜!この味!帰ってきた!」
姉は語学留学のためにドイツにしばらく滞在していたが久しぶりに帰ってきてたようだ。
「はいはい、そこ2人玄関でイチャイチャしてないで姉はお土産冷蔵庫に入れる、弟はさっさと手を洗う!」
母が、僕達に号令をかけるとドーナツをくわえた姉が「ふぁ〜い」と気の抜けた返事をしながら僕の荷物を流れるように受け取り、リビングに消えていく。
外から連れてきた埃を玄関で払い落とし、洗面所で自分の顔を改めて見ると、まだ幼さがあり軽く心が折れかけた。
父が単身赴任で家に居ないため一家団欒、とまでは行かないが、姉が居るためいつもの家よりも明るく見えた。
「そういやお姉はなんで帰ってきたの?退学?」
「んなわけ無かろう!私は天下の小豆さんだぞ!?退学はおろか問題もおこしてないやい!……んまぁ…ママから今日がともの高校入学って聞いたからさぁ…」
毛先を弄りながら姉は可愛らしいことを僕に向かって言ってきた。
「お姉…」
「なぁぁんてねっ☆」
もうこの人の言葉を信じないと心に誓った。
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