4話 にゅうがくしき(後編)
「今日はこのホームルームが終わったら放課になりますので友達なり恋人なり作って帰ってくださいね〜」
強キャラだがかなり緩い、だからこそ生徒に人気が出たのだろう。
1人の男子生徒が口を開いた
「レンちゃん先生は彼氏いるの〜?」
ざわつき始めていたクラスが静まり返った。
視線は当然の権利のように先生に集まっていた。
「ぃなっ……乙女の秘密ですっ!」
口から出かけた一言を思春期男子達は聞き逃さなかった。
青春を夢見る少年たちが口々に騒ぎ立てる中、1人灯夜は窓の外をボンヤリと眺めていた。
「こんな話は今日は要らないんです!さぁさ、みなさん自己紹介しちゃってください!」
各々が自己紹介を始めるにあたってトップバッターは千恵だった。
「あ、浅川 千恵っていいます。中学では吹奏楽でトランペットやってました。えっと、えっと…よろしく…ね?」
頬を薄紅色に染めながら微笑む小動物に自己紹介のハードルが軽く上がった。
一人一人教卓の横に先生から手招きされ名乗りをあげる中、見覚えのある少女がいた。
「んっと……里仲 紫織といいます。得意なことはお料理と裁縫です、不束者ですが、これからよろしくお願いします。」
まるでクラス全員の母のような包容力のある彼女は、式の直前に玉砕していたご本人である。
「うわー、気まずいなぁ…今目合っちゃったし…」
と、小声で誠二が話しかけてきた。無理もない。なんせ告白した少女とそれをやんわり断った男が同じ空間にいるのだから。
……里仲さんに敵対視されてなければいいが。
なんて考えていたら僕の番になった。
「あー…真白 灯夜…です。得意なこと…得意…得意?まぁ…ずっと弓道やってます。」
淡白に終わらせて席に着こうとした瞬間「リテイクです!」と教卓からストップをかけられた
「そんな薄っぺらい自己紹介じゃだめですよ、男の子ならこう……《彼女作るためにきたぜ!》みたいな自己紹介くださいよ〜」
その言葉に僕の表情は歪んだ。
千恵と誠二は僕をよく知っているため、少し固まっていた。
「心に決めている人、居るんで。」
普段よりトーンの低い言葉が自然と流れ出ていた。
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