12.幕間
雲に隠れた月が再び現れる。
床の上で身を丸める歪んだ心を持つ男の姿を、月の光は他のものと同等に照らし出していた。
その胸元は無邪気な子供のように穏やかに起伏している。安らかな呼吸を繰り返す罪ある男の姿に鼻を鳴らし、螢は自分の上着を脱ぎ落とした。
「螢」
「ああ、分かってる。奴は〝本体〟の方に戻った。与志人を捜したらそっちに向かう」
螢は上着を水餓に差し出す。無言で袖を通すその姿を見届けると彼女の手を取り、ゆっくりとその左手に手袋を被せていった。
「……ありがとう、螢」
部屋に射し込む月の光は雲に朧に遮られる。
微かに笑む彼女の左手に螢は何も言わず口づけをした。
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